ジャンク
□失いたくない
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ソワソワ――
ソワソワ――
僕は携帯片手に自分の部屋を行ったり来たり…。
落ち着いていられない…。
だって、亮が家に来るんだもの!
確かに今まで何度も僕の部屋に来た事はあるけど、今日はいつもと違う。ゴールデンウィークを利用して亮が僕の家に泊まりに来るんだ。
あ、もちろん僕の両親も旅行で居ないよ?
亮の両親も仕事で家に居ないのと同じなんだって。
ピリリリリ……
急に手の中の携帯が鳴りだし、ディスプレイには『三崎亮』
「も、もしもし…?」
通話ボタンを押し耳に当てる。
『あ、薫?なんか変な道に入っちまったみたいなんだけどよι』
「近くに何か目印は?」
『横にでかい滑り台がある公園が見える』
「あ、それなら……っ!?」
近くだから迎えに行くと言いかけた時、亮の息を飲む声と耳を塞ぎたくなるようなけたたましい車のクラクションが耳に届く。
『うわぁぁぁぁ!?』
「亮?…亮!?」
亮の叫ぶ声で通話が切れる。
ドクンドクン――
さっきまでの緊張とは違って嫌な緊張が僕を襲う。
「亮!!」
僕は亮が言った公園に向かって走っていた。
公園に着いて辺りを見渡しても何事も無かったように静まり返っていた。
「亮?」
どこ…?
亮っ!!
「薫ー!」
呼ばれて声がした方を見れば滑り台の向こう側にあるベンチから亮が顔を覗かせている。
「亮!!」
姿を捉えると僕の足は無意識にそこへ向かって走り出す。
「どうしたんだよ、血相変えて」
「だって、車のクラクションとか亮の叫び声とか…。電話だって切れちゃうし」
「ああ!アレなιクラクションは俺じゃなくて、飛び出した猫に。俺の叫び声は……」
そこで一度切ると、バツが悪そうに目を逸らすと顔を赤くする。
「亮?」
「猫が…俺の足元を抜けるから…足取られて……」
「転んだの?」
「うっせ////」
「携帯は?」
「そん時落として壊れた…」
高校生にもなって転んだなんて恥ずかしいだろ!って耳まで真っ赤にした亮が可愛くて、本当に無事で良かったって思ったんだ。
「じゃあ、携帯治しに行こうか?」
「いやそれは後ででいい、荷物あるし…。それに転ぶ時足くじいた…」
「大丈夫!?」
「まあ、なんとか…」
「家までおんぶしてあげる」
「ばっ!////歩ける!!」
「だーめ!」
「…………わかったよ」
僕のしぶとさを知ってる亮は無駄な抵抗は止めて、渋々僕の背中に体重をかける。
と言っても亮は軽いから全然重いと感じない。
「ねぇ、亮?」
「ん?」
家に向かう途中、さっき亮が交通事故に遭ったのではないかと思った時の事を思い出す。
「怖かったんだよ?亮がいなくなってしまうんじゃないかって…」
「………」
「僕に黙っていなくなったら嫌だよ?」
「そんな事しねぇよ!事故とかはいつ巻き込まれるかわかんねぇけど……」
「僕には君を失う覚悟なんて無い…」
「可能な限り俺は死なねぇよ」
「うん」
「お前も、だからな!」
「うん」
僕はね普通に死ぬのは嫌なんだ。
僕は君を
守って死ぬか
君に
殺されるのがいいんだ。
これを君に言えば怒られるのはわかってるから内緒だよ。
FIN