企画・過去拍手
□記念日
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記念日
よく晴れた秋の昼下がり。
牧場の仕事も済ませ、昼食後ののんびりとした時間をアカリの淹れてくれたコーヒーを飲みながら過ごす。
もちろんテーブルの向かいには、同じくコーヒーの入ったマグカップを口元で傾けるアカリの姿。
この風景を目にする度に自分が結婚した事を実感する。
「…ねぇ、ゲイル?」
「ん、何…」
今まで目を閉じてコーヒーを飲みながらのんびりとした時間を楽しんでいたアカリが、ふと俺の目を見て声をかけてくる。
それに応えて次にアカリから発っせられる言葉を待つ。
が、じーっと何か言いたげに見つめてくるだけで何も言葉を発っする事はなかった。
「…あの、アカリ?」
その視線に耐え兼ねてアカリが何か話すのを待っていたが、俺が先に音を上げた。
「ゲイルはさ、今日が何の日か覚えてる?」
「今日…?」
ようやくアカリの口から出た言葉は、簡単な質問。
そう…簡単な質問だ。
「…俺とアカリ、初めて会った日…忘れる訳…ない」
今日はアカリが、魔女を知らないかと訪ねて来た日だ。
あの日から俺の生活が変わったんだ忘れたくたって忘れられない。
アカリと言う一筋の光が、俺の心を明るく照らしたんだ…。
「覚えててくれたんだね…」
「当たり前、だよ」
「えへへ!」
「なに?」
何やら企みがあるのか、アカリの笑顔が怪しい…。
「今晩は腕によりをかけてご飯作るね!」
「アカリのご飯…いつも、美味しいよ」
「ありがとうっ!」
「それ、俺のセリフ…。アカリ…ありがとう」
「え?う、うん…」
何に対してのお礼なのかわからない、と首を傾げていた。
「俺と…出会ってくれて…結婚、まで…。俺、ずっと…好きだから」
「ゲイル…。うん!私も大好きよ。これからもよろしくね!」
「こっちこそ」
俺を選んでくれる人なんて、ましてや好きになる人なんていないと思っていた。
この奇跡のような出会いに感謝。
FIN