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□お祭り気分!
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お祭り気分!
じめじめと湿度が高く、雨の多い時期を過ぎて、本格的な夏がやってきた。
僕たち派閥の人間に夏だろうが関係なく任務は入ってくる。
今だってマグナと任務の最中だ。
「あつ〜…」
「文句を言う暇があれば手を動かせ!」
「うぅ〜なんでこんな暑い日に外の任務なんだ…」
僕たちに課された任務は、最近になって統制を持ち始めたはぐれの討伐。
いつもなら喜んで前線に立つマグナも、暑さにやられて口から出るのは文句ばかり。
「これでラスト!」
マグナが最後の一匹を仕留めると、辺りは静かになる。
「もーだめ…疲れた」
「こら!油断するのは早い!」
「大丈夫だって」
「ったく…」
しかし本当に今日は暑いな…。
さすがの僕でも汗がにじむ。
「ねぇネス」
「なんだ」
「夏だな」
「当たり前な事を言うな」
急に真面目な声を出すものだから妙に緊張してしまった自分が情けない…。
「海、行きたいなぁ…」
「は?」
「花火とかお祭りとか!……そんな夏だけの楽しみがあるのにな…」
マグナが言いたい事はわかる。
きっと夏だけのイベントを堪能したいのだろう…。
でも僕たちは組織に属する者だ。休暇なんてそう簡単にもらえるものではない。ましてや長期休暇など夢のまた夢だ。
「もし俺が派閥に拾われる事のない、普通の人間だったら…」
「そうなると必然的に僕と会う事もなかったな」
「…え?それはイヤだな」
う〜ん…と珍しく考えに耽るマグナがなんだか可笑しくて、可愛く見えるなんて…どうやら僕の頭もだいぶやられてるみたいだな。
「マグナ」
「ん?」
「来週、同じ日に休みがあったな」
「え?うん」
「ならそれを返上して連休をもらえないか申請してみないか?」
「えっ!?なんで!」
「今年もファナンで夏祭りがあるはずだ。行きたくないか?」
「行きたい!」
何を考えていたのかなんて手に取るようにわかるが、悲しそうなマグナの表情が一変して晴れやかになる。
この笑顔が見たいがために甘やかしてしまう僕。ダメだなと思いつつもマグナには笑顔でいてもらいたい。
「ならまずはさっさとここを片付ける!」
「お祭り〜花火〜海〜」
祭は再来週だと言うのにもう祭気分のマグナは、暑さなど忘れて片付けを始める。
これは、必ず連休をもぎ取らなければならないな…。
FIN