牧物わくアニ

□永久の愛を…
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この町に古くからの習わし。
愛を誓う相手に青い羽を贈り、それは求婚を意味する。
そんな習わしがあった事は知っている。
そして今、自分がそれを体験しているのだ。

俺の前には今だ鉱山で受けたガスの影響で、体調の優れないアカリがベッドに座り、真剣な眼差しで俺を見る。

そして俺の手にはアカリが危険を冒してまで取って来た青い羽。



俺は今、アカリからのプロポーズを受けている。



まさか、自分がこんな事になるなんて思ってもみなかった…。


「答え、聞かせてくれないの?」
「俺は…」


何と答えていいのかわからない。
確かに、俺はアカリが好きだ。
でも…俺は……。


「答え、一日だけ…待って」
「え?」
「考える…時間が、ほしい」
「わかった…それは預けておくね、明日の夕方16時に教会で待ってるから」
「わかった」


アカリから預かった青い羽を懐にしまい、クリニックを出る。
しっかり考えて答えを出さなければ…。




家に入って、水晶を前に考える。
俺はアカリが好き…。
それは自分の真名を教えてもいいと思えるほど。
だけど…いざとなると怖くなる。
こんなふうに感じるのは初めてかもしれないな…。


大切な人を失うのが、独りになるのが怖いだなんて…。


俺は今までずっと独りだった。
その方が楽でいいと思っていたんだ…。

そんな俺の考えを変えたのは、紛れも無い彼女で、気が付けば彼女のいない生活なんて考えられないほど、彼女は俺の生活の一部になっていたんだ。


だけど、俺に与えられた時間と、アカリの時間は違い過ぎる。


彼女と一緒になって、彼女がいなくなった後も俺は生き続ける。
そんな孤独に堪えられる自信がないんだ…。


「いったい…どうしたら……」



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