05/27の日記
03:23
夢のあと(前編)
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※注意
設定上、スクアーロが女性、つまり女体化です
今まで後天的女体化以外書いたことはないし、今でも先天的な女体化はどちらと言えば苦手ですが、このお話は、彼が女性でない限り成り立たないので、今回初めて女体化スクアーロを書きました
様々なご意見があるかと思いますが、すみません
でも、個人的には女性女性したスクアーロではないと思っています
大丈夫な方だけお読みいただければ…
くわえて長くなり、途中で切ってしまって重ね重ねすみません
.
【夢のあと】
窓から差し込む光があまりにも眩しくて、眠っていたオレは薄く目を開いた。
すぐそばに人の気配があったので、ベッドに横たわったままで声をかける。
「…悪いがカーテンを閉めてくれねぇか」
するとどういうわけかその人間…格好からしてナースだと思うが、彼女は返事もせず、まるで幽霊でも見たような顔でオレを見ていたが、突然弾き飛ばされたようにドアから出て行った。
1人残されたオレはわけがわからず、首をひねって辺りを見渡す。
白い壁に白い天井。ベッドサイドにあるテーブルに置かれたガラスの花瓶には、およそオレの趣味ではないピンクの花が飾られていた。
「……病院…か…?」
そう認識したと同時にドアが開き、さっき出て行ったナースと一緒に数人の医者が入ってきた。
彼らは一直線にベッドまで来ると、1人の医者が興奮した様子で口を開く。
「……ス、スクアーロさん?」
あぁ?
なんだこいつは。なんで本人にそんな質問を…。
呆れて彼を見つめていると、その横にいた年配の医者が静かな声で言った。
「スクアーロさん、いいですか。あなたは8年間眠り続けていたんですよ」
.
医者から聞かされた話によれば、オレは任務中に背後から狙撃され、昏睡状態のまま病院のベッドで、8年もの間眠り続けていたらしい。
すぐに検査が行われ、その結果、医師達が懸念していた記憶障害もなく、オレは撃たれる瞬間から以前のことをすべて覚えていた。
そう、何もかも全部――。
しばらくすると、オレの意識が戻ったと聞いた仲間がやってきて、病室は一気に賑やかになった。
オレの顔を見るなり抱きついて、声をあげて泣くルッスを、離れたところで見ているベルは少し痩せたようだ。
号泣して鼻をすすっているルッスの肩を片手で叩きながら、もう一方の手でベルを手招きする。
それを見た彼は一瞬戸惑うような素振りを見せたが、それでも『来い』と合図すると、ようやくそばまでやってきた。
「久しぶりだな」
そう笑うと、途端に彼は俯き、金色の髪がその顔を覆う。
「……オレ…、あの時オレがついてたのに…こんな…」
「違う。おまえのせいじゃねぇ」
「けど、」
「一瞬でも油断したオレ自身のせいだ」
実際その通りだった。
任務中は自分の命は自分で守るしかない。
だから普段なら、一瞬たりとも気をぬくなんてありえないことだ。
けど、あの日のオレは普通じゃなかった。
その2週間ほど前、毎月来るべきものが遅れていたオレは、まさかと思いながら検査薬を使った。
その結果…。
オレはトイレの中で、箱に書いてある検査結果と自分のそれを何度も見比べた。
でもいくら見ても、検査薬ははっきりと陽性反応を示している。
オレはそれを手にしたまま、その場にずるずると座り込んだ。
こんな身体じゃ、あいつの為に働くこともできねぇ。それどころか、ここに居ることさえ…。
居場所を、あいつを失いたくない―――。
それから2週間後、妊娠していることを周りに隠したまま、オレは任務に出た。
戻ったら、どこか町の医者を探して1人で処置するつもりだった。
それなのにオレは交戦状態のさなか、身体が震えるような恐怖を感じた。
四方から無数の銃弾が飛び交う中でさえ、感じたことのなかった恐怖。
自分の中に、自分じゃないもう1人がいるんだと、誰かがずっとオレの頭の中で叫んでいた。
始末すると決めたはずなのに、どうしてこんな…。
そんな一瞬の隙を突かれ、背後に気配を感じた時には、すでに遅かった。
「ベル、もうその話は終わりだ。……それより――」
オレは話しながら、2人が入ってきたドアに目をやった。
仲間が来てくれたのは嬉しい。
けど一番会いたい男の姿が見えない。
彼を8年待って、今度はオレの方が待たせてしまった。
どうせむこうは『待ってなんかいなかった』きっとそう言うだろうが。
ルッスもベルも外見はさほど変わっていなかったが、あいつがどんなふうになってるのか想像もつかねぇ。
――だから、早く会いたい。
「ボスは?」
「あっ、あのね…、どうしても外せない会議があって…。でもすごく喜んでたわよ、あんたの意識が戻ったこと!ねぇ?ベルちゃん」
「えっ!…あ、あぁ。喜んでた」
「へぇ…、あのボスさんがちゃんと会議に出てるとはなぁ。オレが眠ってる間にえらく真面目になったみてぇだな。それよりベル、お前いい年して、まだ“ベルちゃん”なんて呼ばれてんのかぁ?」
「あ?知らねーよ、カマが勝手に…」
「ちょっとォ!ベルちゃん!」
相変わらずな2人のやりとりを見て、オレは笑いながら、けど何かが引っかかっていた。
会議をすっぽかしてまで会いに来てくれとは思わないが……、いや…嘘だ。
ほんとは誰よりも真っ先に来てほしかった。
その日は夕方にレヴィが、次の日はルッスとベル、それからフランが顔を出した。
本部からも沢田と山本が、わざわざこちらに向かっているらしい。
けど…。
ボスからはなんの連絡もなく、ルッスに聞いても会議が続いてるだのはぐらかされ、オレはいよいよ不安になってきた。
もしかするとボスは、オレの意識が戻ったことに困惑してるんじゃないかって。
オレが目覚めたら不都合な何かが、ボスにあるんじゃないのか。
見舞いの奴らが帰ったあと、オレは病室の隣の部屋で護衛にあたっている隊員を呼んだ。
護衛なんざいらねぇと言ったが、ルッスが何かあった時の為にと交代で置いていたのが役にたちそうだ。
部屋に入ってきたのは、オレがいない間に入隊した男のようで、病院ということもあり隊服ではなくシャツに黒のパンツ姿だった。
オレと1対1になって緊張しているのか、伸ばした指先がわずかに震えている。
「聞きたいことがあるんだが」
「はいっ」
「ボスはどうしてる?」
「…どう、と言いますと?」
その表情を見て、オレはこいつがオレとボスとの関係を知らないと確信した。
下手に古株の隊員だと、そういう噂は耳に入っているはずで、本当の事を口にするはずがない。
「だから、ボスは今どこにいるんだって聞いてんだぁ」
「それでしたら、いつものようにご自宅に…」
言葉と一緒に心臓が口から飛び出しそうになるのを必死で抑え、オレは努めて静かに話す。
「自宅?アジトじゃなく自宅があるのか?」
「はい。ご自宅でお子様達と共にお住まいです」
.
それからあとのことはよく覚えていないが、気がつくとオレは、殴り倒した男から車のキーを奪い取り、ある場所に向かっていた。
気の毒な若い隊員が、虫の息で語ったある場所に。
to be continued
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