02/03の日記

07:29
保健室は恋する場所ではありません〜2〜
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 あれから姿を見せなかったXANXUSが、一週間ぶりに保健室に現れた。
 スクアーロがデスクで書類整理をしていると、突然がらりと扉が開き、見るとXANXUSが手に小さな紙袋を持って立っていた。普段通学カバンさえ持たず手ぶらで登校してくる彼には珍しいことだ。
けれどそのサイズからして、中身が教科書であるはずはなく、思わず「なんだそれは?」と訊きかけたスクアーロの脳裏に、あの場面がよみがえる。
できることなら忘れてしまいたい、もう少しで生徒にキスされそうになった衝撃的で情けない記憶…。
 あの時は本気でテンパってしまったけれど、時間が経ち冷静に考えてみると、たしかにXANXUSは教師に対して悪い冗談が過ぎたと思うが、相手が女性教諭ではなく男の自分だったのは、彼なりに少しは節度をわきまえていたのかもと思えてきた。
それに、甘いと言われるかもしれないが、今まで友達のように接してきて、悪ふざけをエスカレートさせてしまった責任の一端は自分にもあると思う。
それでもいくら彼が気を許しているからといって、教師としてこれ以上ふざけた真似を許しておくはけにはいかない。
 だからスクアーロは、これからは適度な距離を保ちながらXANXUSと接しようと決めていた。


「久しぶりだなぁ」

何事もなかったように努めて普通に話しかけると、XANXUSはそれには答えず後ろ手で扉を閉め、真っ直ぐにスクアーロの席に向かってきた。
そして無言のまま、持っていた紙袋をデスクの書類の上に置いた。

「おい、仕事の邪魔するなぁ」
「開けてみろよ」
「は?」

まったく人の話を聞いていないXANXUSを見ると、彼は口元を緩め何か言いたげにじっとスクアーロを見つめている。
とっさにスクアーロはヤバいと感じた。知り合って半年、彼がこの顔をする時は必ず何か企んでいる時で、しかもそのほとんどがロクなことではない。けれど何故か、いつもこうして知らず知らずにXANXUSのペースに巻きこまれいく。だからこの前みたいなことが起きてしまうのだ。
毅然とした態度をとろうと心に決めたスクアーロは、きっぱりと言い放つ。

「XANXUS、先生は今仕事中だ。おまえもここにいるならちゃんと自習…」
「ほら見ろよ」
「って、う゛おぉおい!人の話を聞―――…」

XANXUSが紙袋から取り出したものを目にした瞬間、スクアーロは口を開いたまま動きが止まり、ついでに心臓まで停止しそうになった。言葉を失うとか目が点になるとか、そんな生易しいものではない。
 彼が手にしているのは、なんと数本のアダルトDVDだった。なぜ即座にアダルトだと分かったかといえば、全裸に白衣を纏った姿でジャケットに写っている女優が、指を筒状にしてフェラチオを想像させるような仕草でにっこり笑っていたから…。

「ンなっ、な、なな…ッ!!」
「これ全部…、」XANXUSはスクアーロの前にDVDを並べる。
「や、やめろぉ!」
「『大人の保健室シリーズ』だ」
「おと…ッ、XANXUS!いいから早くこれをしまえぇえ!」

半分叫びながら目の前にあるDVDをどかそうと手を払うと、数本がバラバラと書類ごと床へ落ちた。するとXANXUSは、デスクに残ったうちの1本を素早く手にして、スクアーロが授業で使うDVDプレイヤーの電源を入れた。

「うわぁああああ!」それを見て、今度こそ本当に叫び声をあげながら椅子を倒す勢いで席を立ったスクアーロは、彼を止めようと制服の袖を掴んだ。
けれどXANXUSはその手をいとも簡単に振り払う。

「あんたのためにわざわざ持ってきてやったんだ。黙って観ろよ」
「おまえっ…、何やってるのかわかってんのかぁ!?」
「るせぇな、人妻とか女子大生って言い出したのはそっちだろ」

不敵な笑みを浮かべながら、彼はディスクの挿入口を開ける。

「それは違うだろぉ!だいたい誰が学校にAV持ってこいって…、いいからそれを先生に渡せ!」
「保健室のベッドでやるんだぜ」

相変わらずスクアーロの言葉を無視してそう言うと、XANXUSは自分の背後にあるパイプベッドを顎で指し、DVDのケースを開いた。
「XANXUSッ!」スクアーロは今度は体ごとぶつかって、両手で彼の手からディスクを奪おうとした。
けれど体格差というか、身長はそれほど変わらないが、細身のスクアーロに比べ、一体何で鍛えてるんだというぐらい逞しい身体をしたXANXUSの力は想像以上に強く、スクアーロは生徒相手に手加減どころか本気を出さなければならなかった。
 
 渡せ、渡さないと揉めている最中、突然ドアがノックされ、2人は掴みあったままぴたりと動きを止めた。


『…スクアーロ先生?入りますよ』

「担任だ」XANXUSがぼそりと呟いたと同時に扉が開く。

「あっ…」扉を開けたスーツ姿の男性は、室内で体を寄せ合っているスクアーロとXANXUSを目にして一瞬あ然としていたが、すぐにハッとしたように「何かありましたか?」と尋ねた。

「い、いえ。XANXUS君が備品にさわろうとしたので注意を…」

注意するのに体を密接させる必要などないだろうと、自虐的に心の中で突っ込んで、しかし勘ぐられるようなやましいことは何もしていないスクアーロは、悠然とした態度でXANXUSから離れた。もちろん白衣の下にDVDを隠して。

「そうですか。すみません」

XANXUSのことで各方面に謝罪しなれている感のある担任は、さらりとそう言ったあと続けた。

「教頭が彼を見かけたと言うので、ここだと思って…。XANXUS君、配布物があるので後で職員室に来てください」
「……」

返事をしないXANXUSに、たまらずスクアーロが口を開く。

「忘れず行くように言います」

担任はちらりとXANXUSに目をやってから「では、よろしくお願いします」と言い残し扉を閉めた。

「返事ぐらいしろぉ」彼が去ると、スクアーロは大きなため息をついて、白衣に隠したDVDと床に落ちたものを拾い、紙袋に入れてXANXUSに差し出した。

「こういうもんは1人で楽しめ」
「観ないのか」
「あたりまえだぁ」

XANXUSは舌打ちをして紙袋に手を伸ばし、「持って帰るか?」と訊いた。

「あのなぁ…、どこの世界に生徒にAV借りる教師がいるんだ。だいたいおまえ、なんでそんなにオレに観せたがる…、」

「すみません!言い忘れたことが」

また扉が開いたかと思うと、さっき出て行ったばかりの担任が顔を覗かせている。

「スクアーロ先生、先日の身体測定ですがXANXUS君だけ受けていないので、今実施していただけますか」
「えっ?今、ここでですか?」
「ええ。せっかく彼がいるし、お願いします」


――2人っきりで身体測定…。
 スクアーロはXANXUSに目を向けた。すると、例によって口元を緩めこちらを見つめていた彼と視線がかち合い、思わず身ぶるいしそうになる。

―何があっても毅然とした態度で接する…。
心の中で呪文のように唱えながら、スクアーロは担任に「わかりました」と返事をした。









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――はぁ…(´ω`;)
「続編を…!」というお声を頂戴して、やってしまいましたね…
続編希望のコメントくださった皆さん責任とってください;;(言いがかり)
学校の諸問題が取りざたされている昨今…こんな教師と生徒を放置していてもいいのでしょうか…

XANXUSくんがAV大好き男子みたいですが実際はきっと違うとおもいます;;「大人の保健室」をスクアーロ先生に観せたかっただけなんです;多分…;;;

とりあえずスクアーロ先生は肉食系生徒から全力で逃げて;;;;;

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