11/08の日記

09:54
奥さまは17歳#2(若干ボス誕)
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「ちょっと、ぬけがけする気?」

「はぁ?自分こそプレゼント隠してるじゃん!」


教室に入るなり、いきなり女子のデカい声。
寝不足の頭にキンキン響いて、オレは耳を塞ぎたくなった。


「なに揉めてんだぁ?アイツら…」

カバンを机に置きながら後ろの席のダチに聞く。

「あー、ほら、XANXUSの誕生日の話だろ」

「―――は?…誕生日ぃ?」

「10月10日らしいぜ。
つーか、あいつらがそう言ってたの聞いただけだけどよ。明日学校休みだし、プレゼント今日渡すんだってさ。あ、それも
勝手に耳に入ってきた情報な」

そう言って、ヤツは呆れたように笑った。


――誕生日。
そういや前に一度だけ
『誕生日いつだぁ』って先生に聞いたことあったっけ。
だけど……

完ッ璧に忘れてたぞぉぉぉーッ!!


「おぃ、スクアーロ、
何ボーっとしてんだ?」

「えっ?あ、あぁ…」

オレは席に座りながら、すっかり忘れてしまっていた先生の誕生日の事で頭の中が真っ白だった。

もぅ明日じゃねぇか
プレゼントも何もねぇ…

ていうかオレ、先生と暮らし始めてから、毎日の生活が忙しすぎて、誕生日のこと思い出す余裕もなかったなんて…

先にどっちが渡すかで
揉めてるらしい女子を眺めながら、オレは先生が喜びそうな物を必死で思い浮かべていた。





+++
午前中の授業が何ひとつ頭に入らねぇまま、昼休み、オレは何となく職員室へ向かっていた。

何となくっていうか、
ほんとはあの女子たちが
昼休みにプレゼントを渡すってのを聞いて、気になって…
だけど別に妬いてるとかそんなんじゃなくて、
先生は一体どんな顔して
プレゼントを受け取るんだろうとか、――って…

う゛おぉぉーぃ!
やっぱり妬いてんじゃねぇか!

気づいたら、オレは小走りで職員室のそばまで来ていた。
案の定っていうか、廊下を曲がる前から女子のキャアキャア騒ぐ声が聞こえてきて、足が止まる。

なんでこぅ、人間ってもんは、見なくていいものを、わざわざ見たいと思ってしまうんだろぅ…

オレは曲がり角から少しだけ顔を出して、廊下の様子を見た。

――すると、
先生の周りには2人どころか4、5人の女子がいて、一足早くプレゼントを渡したらしく、先生の手には紙袋が何個かぶら下がっていた。

空いた片方の手をズボンのポケットに突っ込んで、先生は女子に囲まれるみたいにして立っていた。

――ムカッ

もう既に、オレはその光景だけで、かなりキてしまっていて、ちょっと覗くはずが一歩二歩と足が勝手に前へ出る。

一体先生はあいつらと何喋ってんだぁ?

ただでさえ、昼休みで周りが騒がしくて、話の内容が途切れ途切れにしか入ってこなくて余計イライラする。

その時突然、中でも一番
派手そうな三年の女が先生にデカい声でこう言った。

「ねぇ先生!先生は好きな人とかいるんですか?」


――!!

なっ、ななッ、
なんだあの女ぁ、たった一言でオレの心臓を止める気かぁぁぁ!

一斉にキャーキャー騒ぎ出した女子どもの奇声で
また頭がキーンとなりながら、オレは先生がなんて答えるのか、気になって気になって…
もぅっ、駄目だぁ

ドキドキしながら、壁から半分以上頭を出して、耳を廊下に向けて神経を集中する。

すると、タイミング悪くチャイムが鳴り出し、
例の三年女子が、「先生!」って催促するみたいにまた言った。

しかもその女は、ズンと先生に近づいて、制服の胸の辺りが触れそうなぐらい接近しやがった!

――ぐっ、あの女、ぜってぇわざとだろぉーッ

でもオレは、どうすることもできねぇで、隠れたまま、ギギギと歯を食いしばっていた。

そのあと先生が、仕方なさそうにゆっくり口を開くのが見えたけど、チャイムの音と重なってオレにはその言葉が聞こえなかった。

でもその途端、そこにいた女子が「えーっ!」とか「きゃー」とか口々に喚き出すと、職員室のドアがガラッと開いて、中からジャージ姿のレヴィが出てきた。

どうでもいいけど、あいつがジャージ以外着てるとこ見たことねぇ。


「おまえ達、チャイムが聞こえなかったのか!
いつまでもXANXUS先生に纏わりついて、迷惑をかけるんじゃないッ!」

「うわ、レヴィだ」

「キモッ」

「なっ、なんだとー
今『キモッ』って言った奴前へ出ろー!」

元々逆立ってる髪を余計逆立てて、真っ赤になって怒鳴るレヴィを制しながら「もう教室へ戻れ」と先生がひとこと言うと、そこにいた全員「はぁぃ」と返事をして、階段の方へゾロゾロ歩いて行く。

レヴィのヤツ…
いくら先生のファンだからって、女子相手に何
マジ切れしてんだぁ。

呆れながら眺めてると、職員室に戻ろうした先生が、いきなりこっちに顔を向けた!


や、やべぇッ
いつの間にか隠れるどころか、オレは身体ごと
廊下に出てしまっていた。

先生は扉に手を掛けたまま、じっとオレの方を見てる。

ど、どうしたらいいんだぁ!
ぜってぇ盗み見してたって思われてる!

オレが固まったままでいると、レヴィがオレを見つけて叫んだ。

「スペルビ・スクアーロッ、そこで何をしている!チャイムが聞こえなかったのか!?」

レヴィ!!
なんつータイミングで!
まさかレヴィに感謝する時が来るとは…

オレは「ハィ」と返事をし、そのままくるっと後ろを向いて、もと来た廊下を戻った。



やべぇ、やべぇ、やべぇぞぉぉ…

家に帰ってからの言い訳を考えながら、教室に入ろうとした時、いきなり
ポケットの携帯が震えだした。

なんとなく予感がして、画面を開くと、やっぱりそれは先生からのメールで…
めったに自分からメールなんてしてこないのに、画面にはひとこと『用か?』とだけ書かれていた。


――覗いてたこと、多分
100パー気づかれてる…

オレは『別に』とだけ返信し、そのまま携帯をポケットにねじ込んだ。






+++
放課後、とにかくプレゼントだけでも買おうと、あちこち店を廻ったけど、結局何にすりゃいいのか決まらねぇまま、気づいたらもう7時過ぎになっていて、オレは慌ててスーパーで買い物を済ませて、マンションに戻った。
最近は結構まともな物も作れるようになってきたんで、晩メシはほとんどオレが一人で作る。

その代わり、朝は…結局先生がやってくれてんだけど。

あ、ケーキ…
ケーキは明日でもいいかぁ。
だけどプレゼントは…

当然2人揃って真っ昼間にプレゼントを選びに行くわけにもいかず、かと言ってせっかくの誕生日にオレだけ買い物に出るっていうのもなんか…

どう考えても、プレゼントは明日には間に合いそうもなくて、オレはまた
ため息が出た。







+++
「おかえり」

玄関のドアを開けると、先生が紙袋をいくつも持って立っていた。
明らかに昼間より数が増えてるそれに、思わず視線がいっちまう。

リビングに向かう先生の後ろについて歩きながら、オレは改めて誕生日を忘れていた自分に腹が立って、今さらだが、先生のモテっぷりに胸の辺りがモヤモヤした。

テーブルの上に紙袋をドサッと置くと、先生はいつもと同じように上着を脱いでソファーに腰を下ろす。

昼間のこともあるし、
このプレゼントの紙袋に知らん顔するのも不自然なんで、オレは思いきってタバコに火を点けようとしている先生に言った。

「えぇっと、ごめんなぁ。オレうっかり先生の誕生日…、プレゼントも、まだ買ってなくて…」

すると先生は、タバコの煙りをひとつ吐いたあと
灰皿にそれを置き、その手でオレの腕を引っ張った。

「うぁっ!」

バランスを崩して、そのまま倒れこんだオレを先生はもう片方の腕で抱きとめた。

「…あるだろ、ここに」

「え?」

すぐに唇が重なってきて、同時にTシャツの裾から滑りこんできた手で、肌を撫でられる。
それはゆっくり上に移動してきて、指先が胸を掠めた。

「んンッ、先生…ッ」


先生はオレの耳元に顔を近づけると、耳朶をゆるく噛んで言った。

「―おまえがプレゼントだ」





――あぁ…晩メシ…
せっかくあったかいの作ったのに…

頭の端でそんなことを思いながら、でもオレは
夢中で先生の首筋にぎゅっとしがみついていた。

12時になったら、真っ先に『おめでとう』って言おう。








+++
次の週学校へ行くと、
例の2人がまた、朝っぱらから大音声を発していた。



「もぅあたし、ショックで週末死んでた」

「確かにね…
ああもあっさり認められると、正直きつい」

「先生の好きな人って、どんな女なんだろ。
ムカつくッ」

「は!あんたなんか逆立ちしたって適わない超美人に決まってんじゃん」

「あぁ?!おまえもな!」

ヒートアップする2人の会話を聞きながら、オレはいたたまれなくて思わず教室を出た。








end
10/13
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思いっきり今さらですが
ボスちんおめでとうございます(≧∇≦)

うち色んなボスがいるので、誰で祝おうかと考えて、一番なさそうな
XANXUS先生になりました(笑
ていうか一番甘そうな
言葉を平気でサラッと言いそうなので^^


もし、全文表示されない方がいらっしゃいましたらお知らせください

毎度『SS』とは名ばかりですみませんm(_ _)m


ボス万歳
20101010(←日付詐称。
だが、どーしても書いておきたかった)

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