XS・SS
□奥さまは17歳
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「せ、先生、グラスが!」
「――おまえの髪、ヤニの匂いが付いてんじゃねぇか。何やってたんだ」
身長差ってやつで、むこうは後ろからオレの頭頂部に鼻先を押しつけてきて、羽交い締めの力が増強する。
「痛ッ、ちょ、先生腕いてぇって!知らねーよそんなこと、店でもみんな吸ってたし。あ、オレは吸ってねぇぞぉ!先輩だって車ん中で…。つーか自分の酒の臭いの方が異常だろぉ!」
「ガキの分際で酒飲んで煙草まで吸いやがって…、スクアーロ、おまえもおまえだ。先輩だかなんだか知らねぇが、男と二人っきりで車に乗るとはどういうつもりだ」
「男と二人っ?!なに言って…ッ、だから痛ぇって!やめろぉッ!」
―先生がおかしい!
酒かぁ?酒のせいでこんな絡んでくんのかぁ?!
「なぜ俺の電話に出なかった?」
「えっ、いや、あれはその…」
「お楽しみ中で出られなかったか、――クソッ!
おまえッ」
“なんでそうなるんだぁ!!”
オレは叫んでやりたかった。
けど…。
先生は片手でオレを拘束したまま、後ろから回したもう片方の手でボトムのフロントを開いて、それから自分も下を脱いだ。
何をされるかすぐわかったし、本気で暴れたらき
っと逃げられる。
でも、なんだかそれができなくて…。
約束した時間に帰らなかったのも、電話に出なかったのも、先輩に車で送ってもらったのも全部オレが悪かったんだ。
先生が一体どんな気持ちでオレを待ってたのかと思ったら、たまらなくなった。オレだって仕事だってわかってても、クリスマスに一緒にいられなかっただけで不安になって、いろんなこと考えた。ほとんどは先生が浮気してる妄想ばっかだったけど…。
だから先生の気持ちが、わかる気がした。
それに、
いつも冷静な先生が、オレのことでこんなにキレてんのかと思うと、なんていうかこう…胸がすげぇ熱くなった。
「せん、せっ、オレ、グラス持っ…」
そう言うと、先生は無言でそれを取り上げてリビングへ投げ捨てた。グラスが床に落ちて割れる。アルコールが入ってるとはいえ、やっぱり普通じゃない。呆然と見ていたオレに先生が言った。
「おまえには罰を与えねぇとな」
いつもしてくれるキスも、あそこを指でゆっくり時間をかけてほぐしてくれることもなく、がちがちになった先生のを後ろから力任せにねじこまれて、オレは今まで経験したことのない痛みで頭が真っ白になって脂汗が出
た。痛いなんてもんじゃない。大げさでもなんでもなく、裂けて死ぬんじゃないかと思うほど痛ぇ。
「いっ、ッッ 」
冷蔵庫の扉に手をついて必死で歯を食いしばるけど、涙と涎が勝手に流れまくる。あんまり涙が出るから、今度は鼻水まで出てきて、きっと今のオレってすげぇ不細工なんだろうなって、わざと違うことを考えようとしたけど、やっぱり無理だぁ痛ぇ!
「せっ、せん、せ…ぇ
いでぇ、も、やだっ、」
「…ッ、」
「なァッ、おねがいっ!、むりだ、って…。も、やめてっ」
「だまれっ」
「あァッ! いっ……
…あ??――冷てぇっ!!」
さらけ出した後ろにヌルッとした液体の感触がして、首だけひねって見ると、先生の手にオリーブオイルの小瓶があった。
「なッ、それ…!」
「いてぇんだろ、こっちだっておんなじだ」
そう言うと先生は残りのオイルも全部かけて、空になった瓶をまた放り投げた。トロトロのオイルがオレの腰を伝って床にぼとぼとこぼれる。
「う゛おぉぉぃ!食いもんだぞぉ!」
「うるせぇ、こういう使い方もあるんだ。覚えとけ」
言葉と同時に思いきり腰を打ちつけられる。
「うあぁッ!」
相変わらずオレは冷蔵庫にぴったり張りついて、後ろからの衝撃に耐える。けど、痛みはもうなくて、代わりに声が勝手に…、
「あぁぁっ…ん、やぁ、せんっ、せっ」
「おまえぐらいだ、俺を待たせんのは」
「ンあぁっ、だからっ、ごめっ、なさっ…はぁぁっ」
ちゃんと“ごめんなさい”って言おうとしたのに、大量のオイルがぬちゃぬちゃうるせぇ。床にこぼれた分に足をとられて滑りそうになる。
「しっかり立ってろ」
命令みたいに言いながら、けど脇腹から腕を差し込んでちゃんと支えてくれる。へその上にある先生の手があったかくて気持ちいい。気持ちよすぎる。ぐちゅぐちゅ鳴ってる音は、きっとオイルだけのせいじゃない。
「ンはあぁっ、せんせっ、ごめッ 、―っんッ」
もう一度謝ると、先生は「…心配させるな」って、やっとキスをしてくれた!
オレは嬉しくて、多分鼻水と涎でぐちゃぐちゃな顔のまま「もっと」って言うと、先生は笑ってまたしてくれた。
もうこの際酒臭いのなんて関係ない。
キスしたまま、オレの中で先生がまた動きはじめる。
ラストスパートに合わせて冷蔵庫が地震みたいにガタガタ揺れた。
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