07/15の日記
21:36
10年後武がイケメンなので
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【10年後武がイケメンなので】
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「――あぁ、わかった。なんだか知らねぇが、オレからボスに言っとくから。じゃあな」
スクアーロが一方的に通話を終え、携帯を手放すと、すかさずルッスーリアが声をかけた。
「先にはじめちゃってるわよ。お紅茶、温め直してくる?」
「いや、このままでかまわねぇ」
そう答えて、カップに手を伸ばそうとした時、隣でナッツのクッキーを頬張っていたベルフェゴールが口を開く。
「今の電話、刀小僧?」
「ベル、奴ももう24だぞぉ。さすがに小僧はねぇだろ」
軽く笑いながら、まだほんのり温かい紅茶を口にする。
ちょうど仕事が一段落した時、ルッスーリアにお茶にしようと誘われて、談話室までやってきてテーブルに着いたと同時に電話が鳴りだしたのだ。
「わざわざプライベート用の携帯にかけてくるなんて、なんだったの?ボスにバレたらまた面倒よ」
「けど用件はそのボスのことだぜぇ」
「ボスの?どういうこと?」
意外に思いながら、紅茶を一気に飲み干したスクアーロのカップにおかわりを注いでやる。
「武のやつ、詳しいことは言わねぇんだが、とにかくボスに『気持ちだけで十分だからもう勘弁してほしい』って伝えてくれって。これ、どういうことだかわかるかぁ?」
「それだけ?そんなのわかるわけないじゃない!」
「だよなぁ…。ん゛ん?このクッキーうまいな」
「ありがと。あとでボスにも持ってってちょうだい。さっき声をかけたんだけど、返事がなかったのよ」
「どうせ寝てんだろ」
横から口を挟んだベルフェゴーが、肩をすくめてみせる。
「それがね、物音がしてたから寝てはいないみたいだったの…。邪魔しちゃ悪いと思って引き返したんだけど」
「ししっ、返事できないって、ボスまたヘンなDVDでも観てんじゃね?センパイ、今晩セーラー服とかでとんでもないコトやらされるぜ」
「う゛ぉおおぃっ!つまんねぇこと言うなぁ!」
「うわっ!きったねぇな、口からクッキー噴くなって。ったく、上も下もシマリ悪いっつーの」
「ッ!んだと、てめぇっ、もういっぺん言ってみろっ!」
――ほんとうに、いい年をして、この二人は昔からまったく進歩しない。
煽る方も煽る方だが、速攻釣られる三十代も如何なものか。
お気に入りのマイセンのカップが割れる前に二人を止めなければと、ルッスーリアがため息をついたその時。
「あら、ボス!」
その言葉に、大人気ない二人も揃って顔を向けると、開いたドアの前にXANXUSが立っていた。手には大きめの封書を持っている。
「カス、なにやってんだ」
「いや、ベルがよぉ、ボスが部屋でヘンなDV…」
「わぁーっ!黙れよ、バカ鮫」
「ばッ、てめーっ!」
「もういい加減にしてちょうだい!どっちもバカよっ」
二人を一蹴すると、ルッスーリアはXANXUSに声をかけた。
「ボスもこっちに来てお茶でもいかが?ちょっと騒がしいけど」
するとXANXUSは手にしていた封書を掲げて言った。
「それよりこれを至急本部に郵送してくれ」
「あら、また?」
XANXUSから同じようなものを預かるのは四通目だった。
ルッスーリアがそれを受け取りに行くのを見て、スクアーロが思い出したように声をあげる。
「そうだ、ボス!山本武が『気持ちは有り難いけど、もう勘弁してほしい』ってボスに伝えてくれって言ってきたんだけどよぉ、なんのことだぁ?」
XANXUSのこめかみがピクリと動く。
「奴と話したのか」
「あ…えーっと…、今電話が…」
この時点でベルフェゴールは自分のティーカップを持ってダイニングテーブルからソファーに移動した。
長年培われた危険回避の術。それは、大地震や山火事が起きる前、森の動物たちが一斉に避難する、あの仕組みに似ている。
「チッ、…あのガキ油断も隙もあったもんじゃねぇ」
「え゛?なんだって?」
どうやらスクアーロには最初の舌打ちしか聞こえなかったらしく、席を立ちXANXUSの元へ向かう。
そうして目の前までやってきた彼に、XANXUSはゆっくりと口を開いた。
「それで、奴は他に何か言ったか」
「他に…?あぁ、久しぶりに剣の相手をして欲しいからこっちに来ないかって。いい温泉も見つけたから、どうせならそこで合宿しようって」
「がッ!!」
一瞬にしてその場の空気が凍りつく。
『げっ、アホすぎる!』
『ちょっとォ、嘘でしょ!』
ベルフェゴールとルッスーリアは、思わず心の中で突っ込んだ。
―どうしてそれをバカ正直に告げてしまうのか。
もしもスクアーロが、駆け引きできる人間だったら、この発言もXANXUSの気を惹こうとした確信犯だと思えるかもしれない。しょうがない年増の小悪魔だと、呆れながら笑いもできるだろう。
けれど、二人は彼がそんな面倒くさい小細工ができる人間ではないことをよく知っている。
知っているからこそ、自ら修羅場を招くようなことを平然とぶちかます残念脳スクアーロと、何よりかまされる側のXANXUSが気の毒だった。
いくらXANXUSといえど、好きで機嫌を損ねたいはずはない。
それなのに…。
「おぃっ、これをさっさとあのガキに送れ」
明らかに苛ついた様子でルッスーリアに差し出された封書が心なしか震えている。
天然もこじらせると凶器になるということを、多分スクアーロは一生気づかないままだろう。
「んん?ガキって武のことかぁ?」
XANXUSがうっかり口を滑らせたのを聞いて、スクアーロが興味深そうにそれに目をやる。
「もしかして、あいつが言ってたことって…」
封書から移された瞳に真っ直ぐ見据えられ、XANXUSの苛々は更に募った。
「そうだ。これのことだ」
「…ボスがわざわざ武に手紙?なんか信じらんねぇ…」
今にも『見せてくれ』と言いだしそうな様子のスクアーロだったが、やはりいくら空気が読めないことにかけては右に出る者がいない彼であっても、他人宛の手紙を見たいというのはさすがに気がひけるのか、黙ったまま再び視線を戻した。
「余計な詮索はよしましょ〜」
けれど見たいと言い出すのも時間の問題だと察したルッスーリアは、わざとやんわり言いながらXANXUSの手から封書を取ろうとした。
「――けどオレ、あいつから頼まれたから一応確認する義務が…」
―ほらきた!
「あらぁ、でもこれもう封もしてあるし、残念だけど、」
「かまわねぇ、見せてやれ」
「え゛っ?」
XANXUSの言葉に、思わず伸ばした手が止まる。
「サンキュー、ボス!」
あ然とするルッスーリアの目の前で、スクアーロは驚くべき速さでXANXUSの手からそれを取ると、一気に開いた。
「…写真?」
彼が中から取り出したのは、上半身と全身が写った女性の写真二枚と、小さな紙切れが一枚。
そこには写真の女性のものであろう名前や年齢、出身地に学歴や身長体重までが記してあった。
「なんだこりゃ?」
首を傾げるスクアーロの手元の写真を、ルッスーリアも覗きこむ。
「あら…」
その女性は、綺麗なストレートの銀髪を片方だけ耳に掛け、斜め45°の体勢で、涼しげな切れ長の瞳をこちらに向け微笑んでいた。
シンプルな黒いノースリーブのワンピースからのぞく手足は長く華奢で、申し訳ないがバストもそれほど自己主張しておらず、どちらかといえば中性的な雰囲気をもっている。
‘クールビューティ’という言葉がぴったりだ。
さらに彼女はとても似ていた。
今ここで写真を持ったまま、首を傾げている人物に。
「お見合い写真かしら?」
「ああ」
「おみっ…、お見合いぃいいーッ?!」
スクアーロが絶叫する。
「るせぇっ」
「あ゛、あぁ、すまねぇ。だってよぉ、どういう風の吹き回しっつーか、あんたが他人の世話焼くなんて、世界が滅亡したってあり得ねぇ…いや、やっぱり信じらんねぇぜ」
そう言ってまた写真をしげしげと眺めるスクアーロを横目に、ルッスーリアはXANXUSに訊ねた。
「もしかして前回の三通も同じような内容?」
「ああ。奴の好きそうなタイプを厳選してやったのに、どれもこれも断ってきやがって…」
「たしかに‘好きそうなタイプ’ね」
ルッスーリアは苦笑した。
XANXUSもいろいろ苦労しているのだ。
「あ!でもよぉ、ボス。やっぱり嫁さんは日本人の女がいいんじゃねぇかな。あいつ家が寿司屋だし、女房になったら親父の店手作ったりすんだろ?だったら日本人の方が何かと、」
「てめぇは黙ってろッ」
「あだッ!な、なんで殴るんだぁ!」
XANXUSは頭を押さえるスクアーロに見向きもせず、そのまま踵を返して出て行った。
「なんなんだよ、あれ」
「さぁ…なんなのかしらねぇ」
ふとベルフェゴールに目をやれば、彼は話の内容からすべてを察したのか、避難したソファーで安らかな寝息をたてていた。
end
7/15
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ボスは10年後武に多少なりとも危機感を持っていて「先手必勝」だと思ってる(笑)
隊長が浮気するとは思ってないけど、非常に押しに弱いのと(笑)10年後武の本気(と書いて‘マジ’と読む)に気づいてるから、早く既成事実を作ってしまいたいんですね^^
涙ぐましすぎる^^^^
アンドレイたんみたいな♀を血眼で探すボス、がんばれ!
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