☆佐伯瑛☆

□大接近は罪だ!
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デートの帰り道、二人きりになると、俺をつんつんベタベタ
さわってくるこいつには、ほんとにまいってる。
そんな触られたら誤解するだろ。
俺もいいのか。なんて思ったりするだろ。

「ねぇ、瑛、今日も楽しかったね」

なんて言いながら、ほっぺをつんつんしてくる。
やめてくれよ。俺も触りたくなる。

「そんなにくっつくなよ。歩きにくいから」

「えー。なんで?」

「なんでって。それは、まぁ、別にいいけど」

いや、良くない。良くないんだよ。
俺の理性が保てないじゃないか。

「いいんでしょ?」

ほら、また触る。もう毎回こんな事されて、俺おかしくなりそうだよ。

「ねぇねぇ」

「あー、もう!」

彼女の手を引っ張り抱き寄せる。

「きゃ!」

そのまま強引だけど、キスしてしまう。

はっ!今、俺、何した?
キスした?
慌てて、離れる。
したよな。俺。でも、こいつ、慌ててないのか?

「あー、今のは」

「な、なに?」

「今のはおまえが悪い!」

あー。何言ってんだ。俺は…

「え?」

「おまえが触るから…」

「わ、私のせい?」

「だって、そうだろ。毎回つんつんベタベタされて俺どうしていいか」

こいつに触るなって言うほうが無理なんだ。わかってるんだ。

「どうして私が悪いの?触ったらいけなかった?」

「いや、それは…」
「いけなくない。むしろ触られたい。違う!何でもない」

つい本音が。こいつわざとやってるのか?

「私はどうしたらいいのよ!」

「おまえはそのままでいい。俺が気をつければいいんだ。うん」

理性だ!我慢だ、俺。

「瑛の言ってる事、よくわからないよ」

「だから、おまえが悪いんだけど、俺も悪くてだな」

「もう!どっち?」

「おまえに触られると俺どうしていいかわからなくなる」
「このまま、おまえに触れてもいいのかって思う」
「なあ、俺はおまえにどんな態度とったらいいんだ?教えてくれ」

「そんな事、急に言われても…」

悩むよな。おまえはただ触ってるだけで、別に何の意味もなくて。
でも、ずるいよ。俺はおまえが好きなのに。
だめだ。もう耐えられない。言うしかないよな。

「あのさ、こんな事言ったらおまえは引くかもしれないけど」

「え?」

「俺、おまえが好きなんだ。だからあんな事…」

「あんな事ってキスした事?」

「ごめん。勝手な事して」

「謝らないでよ」

怒ってるのか?そうだよな。いきなりはないよな。

「私の気持ちはわかってくれないの?」

「は?」

「私がどんな気持ちで触ってたかって事」

「触りたいからだろ?ふざけてたんじゃないのか?」

何だよ。突然。鈍いこいつが考えて触ってたって事なのかよ。

「瑛は何でキスしたの?」

「だから言ったろ?好きだからだよ」

恥ずかしい事何度も言わせるなよ。

「どうして私は逃げなかったと思う?突然だからだと思うの?」

「違うのかよ」

「違う!」

涙をポロポロ零しながら思いがけない事を言い出す。

「好き。なの」
「だから触りたくなるの。何でわからないの?」

嘘だろ?鈍感なのは俺の方かよ。
俺のこいつを想う気持ちが強すぎて、わかってやれなかったのか?
俺は何てバカなんだ。

「ごめん」
「両想いなんだな、俺たち」

「そうだよ?」

我慢しなくても良かったのか俺は。泣かせちまったな。
もっと早く伝えるべきだったんだな。

気持ちが通じてから初めてのキスをした。
涙は手で拭った。

「好きだ。愛してる」

「私も好きだよ」

それから俺たちはいつも通り、つんつんベタベタされながら
帰った。でも、今日からは、俺からも触っていいんだよな。

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