☆佐伯瑛☆

□人魚と若者の物語
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少女は小さい頃住んでいた海のある街に引っ越してきた。
今日から高校生活の始まりだ。
朝、海辺を散歩していると灯台のそばに小さな家を見つけた。
こんな所にお家があるんだ。
窓辺には王子様のような若者のような素敵な人がいて…
わぁ、素敵な人。海が似合うってこういう人の事をいうのかな?
何故だろう?彼に懐かしさを感じて少女はそこを去った。

その事が頭から離れずにいた少女は道に迷ってしまう。
何度も何度も灯台の所に戻ってきてしまうのだ。
まるで何かに吸い寄せられるように…呪いか?

カランカランと音を立ててドアが開く。
さっきの王子様のような若者のような人が出てくる。

げ。

"え?何?"

うちの店に何か御用ですか?

"ずきゅーん!なんて素敵な営業スマイル。ここ、お店だったんだ"
あの、私、迷ってしまって、人魚の呪いのようにこの場所に
何度も何度も戻ってきてしまうんです。

"人魚?………………………はっっ!!"
君、どこかで会った事ない?何だか懐かしい感じがして…

え?私も懐かしい感じがするんです。
前にこの街に住んでいたから会った事があるかもしれませんね。
えへ♪

"…ストラーーーーイク!直球ど真ん中!か、かわいい"
 …………………ん?
"この子だ!あの時の人魚だ!おませな俺が強引に初めてキスした
約束の人魚!!"
"かわいかったなぁ。あの時のこの子。勝手に約束したけど見つけた!"

っと。何でもない。駅までの地図書いてやるからちょっと待ってて。
そこどいて。ゴミ捨てに行けないから。…ツン。
"あぁー!人魚なのに冷たい態度とっちまった。何でこの子にだけ…"

一度言ったからには後には引けない。

ありがとうございました。それじゃ、さよなら。
"わたしの高校生活いい事ありそう…かな?"

彼女とは同じ学校だという事がわかり心の中では喜びつつも
嫌味な態度を続ける瑛。
ここから瑛の悲劇の高校生活は始まった!

彼女は一見地味なようでありながら、学園のアイドル。
数多くのハイエナのような男どもが狙っている。
おとぼけな彼女は気付いていないところが唯一の救いだった。
それだけに油断はならない。瑛の監視は毎日続いた。

ライバルを上げるとキリはないが、勉強にしか興味のなさそうな
氷上でさえ彼女を狙っている。
彼は実は内面的にはおもしろい性格でそれを彼女に知られるのは
瑛にとって耐えられない事だ。
下校時に自転車のカゴに彼女の荷物を入れて誘惑しようとしている。

"やめろー氷上!生徒会執行部はいいのか!うるうるうる"

学園で瑛と人気を競う針谷。バンドマンで顔も良く一番の
ライバルと言ってもいいだろう。
こともあろうか、彼女の下校時に私服で現れ、ショッピングモールへ
連れて行った前科がある。これも耐えられない。
彼女もショッピングモールでは楽しそうにしていた。危ない。
瑛は密かに尾行していたのだ。

"ギターを教えてもらうフリをして針谷に近づけば彼女の事を名前で
呼び捨てにして親しそうな様子だ。うるうるうる"

野球部に未練がある志波には彼女から声をかけ、うちは初心者も
大丈夫!とマネージャー業にうちこむ姿を見せられた。
図書室では背の高いのをいい事に彼女に近づく志波。
あまり喋らないからと言って油断大敵だ。

"スポーツ万能の俺でもお前にはかなわないんだよ、頼むよ、志波。
野球部に入る事は俺が許さん。うるうるうる"

大丈夫だよな、若王子先生。まさか生徒に手は出さないはず。
ブー!先生も男です。やるときゃやります。先生は彼女にピンポンです。
とんだダークホースだ!
この前はビーカーで彼女にコーヒーを飲ませていた。

"コーヒーなら珊瑚礁で飲んでくれ!先生、まさか薬なんか
入れてないよな。頼むよ、耐えられないんだ!うるうるうる"

数を上げればキリがない。彼女は確実に学園内でも美形の男子に
狙われている。

"俺は…俺は…どうすればいいんだー!"

こうして瑛は毎日監視を続けながら、壁の影に隠れて涙を流す
日々を送っていた。
そして瑛の爆弾は点火間近に迫っていた。
…そんなある日。

携帯着信。

"か、彼女だ!俺の人魚からの着信だ。何故だ。
落ち着け、落ち着くんだ、俺。いつも通り、自然に…"

はい。

あ、佐伯くん?今度の日曜日、水族館に行かない?

俺とお前で?なんで。
"わ!ひどい言い方しちまった。切られるかな。ドキドキ"

そんな言葉で動じるような少女ではない。

それじゃ、日曜日にね♪
"佐伯くんとデートの約束しちゃった♪"

"あせったー!でも、デートだ。彼女とデートだーー!"

"佐伯くんて、何だか懐かしい感じがするんだよねー。
初めて見た時から。やっと誘う事ができたよー♪"
さてと、ソフィアでピュア服買って来なくちゃね。うふふ♪

瑛の好みなどお見通しの少女。恐るべし。
彼女のような子を天然小悪魔と言うのであろう。
こうして二人の第一歩が始まった。
二人の未来はどうなるのか…それは二人だけの物語。
めでたしめでたし。なのか?

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