小説

□3 紅の華舞う時
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アオイと紅椿が幕末にやってきて一週間がすぎた。 えっ、彼女たちはどうやって生活してきたって?? 実は20179年からの唯一の所持品である携帯の保存フォルダ機能の食料品や日常生活品で補っているのである。アオイの時代の携帯は写メや音楽だけでなく食べ物や生活品さえも保存できるようになっているのである。アオイはチキンであるがゆえに幼なじみの「アオイ、明日核爆弾の雨ふるってよー」という適当な言葉を「まじでか?食料貯めなきゃ、飲み物も、生活品も、警察は119番だっけ、死ぬーーーーーー!!!!」と大騒ぎして大量に保存しきれるだけ限界まで詰め込んでたので今をしのげているのである。                                                                                                                                                                               「ねぇ、紅椿ー。」   アオイは修理した畳に寝転びながら紅椿を呼んだ。
『なんだ主?』     「今更だけどここって日本のどこ?」
『まさに今更だな。ここは京だ。』        「京って京都のこと??私ちょうど行こうとしてたよ、うー、観光したい。」 そう言いながら畳の上をゴロゴロと転がった。   『私は別にかまわないがホントいいのか?』    「だって、一週間も外出てないし頭にきのこ生える」
俯せになってつぶやいた。            『大丈夫だ、もう手遅れだ』           「そんなにか??もう、我慢できん。今から外行くよ紅椿。」        そう言って乱れた茶色の巻髪を整え立ち上がりそばにある紅椿を手に取り腰にさした。玄関でぺたんこブーツをはき携帯が入ったカバンを持ち我が家(仮)を出た。                                                                                                                                                                                                                      一週間前に歩いた道程も夜と昼とでは大きくかわっていた。着物や袴を着ている人であふれ、呉服屋、八百屋などの人を呼び込む声が響いている。その中を洋服を着て茶色の髪を揺らしながら歩く。                   「いやー、さすがに人が多いなー!!」      アオイは見たことのないものばかりときょろきょろと辺りを目を輝かせながら歩いた。         「あっ、和菓子売ってる。あの、かんざし可愛い。あの店なんだろ?」    あれよこれよと指を指し歩くアオイに紅椿はそっと息を吐いた。       『主、少し落ち着かれては?更に目立ちますよ?』 「だって、楽しいんだもん」           そう、洋装で腰にサーベルをさすアオイはとても目立っており、アオイのまわりは人が避けていくため広く辺りからは「異人」とささやかれていた。     そんなアオイの前から浪人風のいかにも柄が悪そうな侍が2人歩いてきた。
2人はアオイを見るなり顔を合わせにやりと笑いアオイとすれ違い様に肩をぶつけた。                                             どん。                                                                                                         『いってーな!!!おい、痛ぇーじゃねぇかい。こりゃ骨折れたな、おぉ痛い』
「おいおい、ネエチャンどう落とし前つける気だ?あぁ?」           侍たちはアオイに詰め寄り怒鳴り付けた。     「あっ、ごめんなさい。あまり前を見ていなかったものですいませんでした。」アオイは深々とお辞儀をした。          『主、こいつらわざとぶつけてきたぞ。』     「うん、謝る程度で済むとは思わないけどね。うーん済まなかったらどうしよう?」          『心配いらない、私の力を少し貸す。この程度なら呪文もいらないしな。』  「あっ、よろしくね。」 と心の中で会話をする。いまだ怒鳴り続ける侍がずっと黙っているアオイに不満を持ち始めた。     「おい、聞いてんのか??医者代として有り金渡せって言ってんだよ。」   怒鳴る声は更に大きくなっていった。まわりには野次馬ができ、ある人は同情の目である人は興味の目でアオイを見ていた。    『それとも身体の方で払うかぁー??』      「そりゃいい。」    二人の男はにやりと笑いアオイの肩に触れようとした。           『主!!!』      紅椿の声が頭に響いたと思うと力が流れ込んできた。                        「・・・る・・な。」              『あっ?なんだって?』 ぎゃはははと下品な笑いが響く。                     「触るなと言っている。その汚らわしい手を退かしてもらおうか。そして、消えろ目障りだ。」
それを聞き侍たちは激昂し『なんだと!?女の分際でふざけやがって許さねえ』「おとなしく言うこと聞いていればいいものを。馬鹿な女だぜ。」      それぞれ腰の刀を抜いた。                        「二人まとめてきな、抜くまでもない。」     アオイがそう言うと「このアマがー!!」と一斉にむかって行った。     一太刀目を右へと避け、後ろから切り付けてくる男の腕をつかみ背負い投げをする。「くっそー!」と刀を振り落とす残った男の太刀を避け後ろへ回り首刀を落とし気絶させた。                            「はっ、弱!」     そうつぶやいた途端   「この人たちを伸したのはあなたですか?」    声をかけられ振り向くと浅葱色のだんだら模様の羽織を来た人たちがいた。
                        「はぁ、一応そうですが それが何か??」                「失礼ですが、お国はどちらかうかがっても?」              そんなの決まってんじゃん「日本ですが。」                「ふざけてないで沖田先生の質問に答えてください。」 
月代の可愛い少年がアオイを見上げながら言う。              「(可愛い)ふざけるもなにも、日本生まれの日本育ちなのだからそれ以外どう言えばいいのです!」              この時代、日本全体を国と考える者はまだ少なく各藩を国としてとる者がほとんどだった。つまり、どこの生まれですかと聞かれたわけだがアオイがそれを知る由もない。                   沖田先生、どうしますか?と少年は沖田と呼ばれた浅黒い肌のひらめ顔の男を見る。          「うーん、とりあえず屯所まで一緒に来てください」                                    どうしよう。悪い人じゃないっぽいけど知らない人についていったらバラバラにされるぞって言われてるしなー。恐!!!!    っていうか何かこんな人たち見たことあるような気がする。この時代に知り合いなんて紅椿くらいだしなー。           『主、こいつらこの時代に来た日に男を襲ってたやつらの仲間じゃないか?? 羽織が同じだ。』    紅椿が言うと道理で見たことあると思った、派手だもんなこの羽織と納得していた。          『どうやら、こいつらは組織のようだな。時空犯が潜んでる可能性があるやもしれん。』                    「マジで??手がかり見つかるかも。」                  『リスクも大きいが行くか?』          紅椿の質問にアオイは手をぎゅっと握りしめ    「それが私のやるべきことだから。」       と紅椿に言った。                『主が決めたのならついていくまでだ』      そう言う紅椿が笑ったように感じた。                                                                                                       「どうかしましたか?」 沖田が急に黙ったアオイを見て言う。少年も少し心配そうにアオイを見ている。                        「大丈夫です。行きましょうか。」        アオイはにっこり笑って沖田と少年と共に歩きだした。【壬生浪士組】屯所へ。

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