小説

□2 紅の華舞う時
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んー、何かフワフワする。気持ちいい。布団の中にいるみたい、ずっとこうしていたい。        そんな願いも虚しく心地よい感覚は案外早く消えた。                        ドシン。        「いっ、痛ーー、ケツ打った。」        
『主、大丈夫か?女人なのだから足は閉じたほうがいいぞ。』        「お母さんみたいなこと言うなよ。っていうか誰?」アオイは声の主を探そうと辺りを見回した。しかし、そこには、誰もいなかった『私だ。紅椿だ。』   「えっ、紅椿??こんなにしゃべれたんだー。」  へぇーとアオイは頷いた。『ああ、しかし私の声は主にしか聞こえないから口で返事をするとただのでかい独り言になるぞ』    聞いた途端、アオイは頷くのをやめ、辺りを見回した『安心しろ、どうやらここらには人はいないみたいだ』           「っていうか、ここどこ?しかもいつのまにか夜だし。」     
でかい独り言になると言われアオイは心の中で問い掛けた。         『クロノスの話を聞いていなかったのか?ここは1863年の日本だ』        「1863年ね、1863年・・・・・・・何時代だ?室町?」           アオイは首を傾げた。  『違う、江戸時代末期、幕末だ。』        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・幕末ですとー???おい、大昔に授業で聞いたような、聞かなかったような(現役高校生)とりあえず、超キケンな時代と言うことは理解できるぞ。  死亡フラグが立ってるよー。『安心しろ、多分大丈夫だ。』          「多分って何???不安を煽るだけなんすけど!!』無視。         『そんなことより移動するぞ。歪みの気配だ。』  また無視された。二回目はマジへこむわー。    愚痴をこぼしつつアオイは立ち上がった。     「で、歪みはどこなの?」辺りを見回しても林なのか森なのか木しか見えない。『この林を抜けたところだ。』          「じゃ、いっちょ行きますか」          そう言うとアオイは林を抜けるために歩きだした。 30分後         「やっと、抜けるね。」
『そうだな。』     ざくざくとひたすら歩き続けて今まさに林を抜けようとしていた。      その時、        「そっちに逃げたぞ、追えー。」         という声と複数のばたばたと走る音が聞こえた。  アオイが草影からそっとのぞくとどうやら誰かが追われているようだった。  「もしかして、これが歪み??」         『そうみたいだ、あの男から歪みの気配がする。』 「時空犯?」      『いや、時空犯によって起きた歪みのようだ。追われている男を助ければ歪みも元に戻る。』      「助けるってどうやって?」           『私の名を呼べ、さすれば力、解放されるだろう。






汝、歴史を救う者なり。』その瞬間、アオイの身体が熱くなり力がみなぎる感覚に襲われた。同時に頭の中にある言葉が浮かぶ。  「っつ!!!!     時渡りの任務今、遂行すべし。                                                                                                                      紅椿   始動。」   そう唱えた途端サーベルがカタカタと鳴り出した。アオイは気が付くとサーベルを抜き男のもとへ駆け出した。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  『桂、覚悟!!!!』  追われていた男こと桂小五郎は複数の浅葱色のだんだら模様の羽織の男たちに囲まれていた。      「くっ、まだここで死ぬわけにはいかない。」   そうつぶやき鯉口を切り男たちに刀を向け挑もうとしたその時                                                                                                                                                             ガキーン                                            金属の重なる音が響いた。そして、ドサと桂を囲んでいた男たちが倒れた。  『な、何者だ!!!?』 最後に残った男が大声を張り上げる。       「私?しいて言うなら一般人かな。」       アオイはくすくすと笑いながら倒れた男たちを見た。「まあ、あなたもすぐに寝てもらうから私のことは知らなくていいよ。」   『異人のような格好な怪しい奴め、女といえど邪魔だてするなら容赦せぬぞ』 言うなり男はアオイに刀を向け切り掛かった。   アオイはフェンシングの構えをし、男の刀を流し間合いをとり踏み込んで突きを繰り出した。そして、月の明かりに怪しく光る切っ先を相手の刀を巻き込むように回し刀を弾き飛ばした。               ヒュルルルーーーーーーー                                                                                    ドス。                                 弾き飛ばされた刀が地面にささる。そして間合いをつめて「おやすみなさい」 そう言ってアオイは男の首に首刀を落とし気絶させた。                                   桂は目の前の出来事を呆然と見ていることしかできなかった。        一人の毛色の違った洋装の女が自分を助けているのである。                                 「任務 遂行。」    そう言い、カチンとサーベルを自分の腰に戻した。 アオイはふーっと息を吐き桂の方へ身体を向け一言「追っ手くるかもしれないから早く逃げなよ。」と言いその場をあとにした。                                                                                                                                                                     このことはのちにアオイが倒した浅葱色のだんだら模様の羽織の組織    【壬生浪士組】   に知れ渡ることになる。                                                                                                                                                 そうとも知らないアオイは「うまくコントロールできたっぽくない???何げにかっこよかったし。」  『初めてにしてはなかなかじゃないか?』     とのんきに紅椿と会話をしながら夜の道を歩いた。

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