シャーマンキング

□学生会話
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「でな!ハオの奴俺の服借りるとかいってんだぜ!?」

「ほう・・・」



午前の授業が終わりむかえた昼休み。

ホロホロは頭部にトンガリという特徴的な少年、蓮に先程のできごとを話していた。



「貸してやればよいではないか」


購買で買ったパンをがっつくホロホロをみながら呆れた様子の蓮。

ホロホロはてっきり、蓮は自分と同意見だと思っていたのだが。

その希望を断ち切られ、見るからにテンションが下がっていく。




「え、だってなんかさ?嫌じゃねえ?」

「器の小さな男だな、貴様は」

「俺だってハオじゃなきゃここまで抵抗しねえって!」

「人を選んでいるようでは尚更だな」

「ぐっ・・・!!」



反論しようにも確信をつかれ言葉につまる。

そもそも蓮に口で勝つことなどホロホロができるはずもなかった。

半分ほど残っていたパンをやけになったように口に押し込めていく。



(・・・ムキになる所が益々ガキだ)



ホロホロの子供のような単純な行動にもつ純粋な感想だった。

とにかくホロホロの行動は単純明快。

何を考えてるのかわかりやすく、変に自分をかざらない。

そんな所に好感をもつ者が多いのも事実なのだが。

蓮はそれが更に気に入らなかったりする。




「じゃあ、蓮はハオに服貸してっていわれたら貸すかよ?」

「貸さんな」

「ほらやっぱり!!蓮だって貸さねえじゃんか!!」



大きく発せられた言葉はよく響いた。

ここが教室だったら、クラスの者達が一斉に注目しただろう。



「うるさいっ!!」


だが幸いなことに今日は屋上で昼食をとっており、ホロホロの声は空気中に吸い込まれていくだけだった。

人がまったくいないわけではなかったが、そこまでの注目は浴びずにすんだ。

真横で大声を出された蓮の耳は少々被害があったが。



「そんなに嫌なら貴様も断ることぐらいしろ!」

「だってあいつ逆恨みしそうじゃんかっ!!」

「男ならそれぐらい覚悟を決めろ!」

「・・・うぅっ」


頭上に広がる快晴な空とは不釣り合いな表情で、またもやホロホロは俯く。

しばらくブツブツと何かいっていたが、蓮はたいして気にもとめず食事を続けた。




「あーあ・・・蓮にだったら喜んで貸すのにさぁ、てかむしろ俺から頼むのに」

「馬鹿か」

「だって俺のТシャツとかお前絶対ぶかぶかじゃん、ぶかぶかの服着てる蓮とかヤバいだろ」

「貴様・・・喧嘩を売っているのか」

「ちょっ、違うって!ごめん蓮!」




しまった、と心の中でホロホロは思った。

無意識といえど、遠まわしに蓮が小さいと言ってしまったも同然だったからだ。

もちろんホロホロに悪意などなく、そんなつもりではなかったのだが。

とにかくこの状況をなんとかしなければ。



永遠説教が続く、無視される、技をかけられる。

今までにされたアレコレが頭を瞬時によぎり、蓮を落ち着かせることに全力でとりかかった。







「だってさ、前に蓮が俺のワイシャツ着た時ぶかぶかで良かったんだもんよ・・・」

「何がよかった、だ。ふざけるのも大概にしろ」


少々やつれた様子のホロホロがポツリとつぶやいた。

あれからホロホロは何とか蓮を落ち着かせることができた。

まだ言葉にトゲが残った口調だが、とりあえず最悪の事態にならずにすんだ。




「ふむ、しかし新しいことに挑戦するというのは悪くない、たとえ服であろうとも」

「・・・・・・そーですかネ」

「ハオもたまにはマシな事をいうものだ」

「・・・・・・そーか?」

「週末、服を買いに行くつもりだ。貴様もついてこい」

「へ?」


最後の言葉には気力なかった声に感情がこもった。



「たまには違う服を買ってみるのもよいだろう、ホロホロ、貴様が服を見立てろ」

「え、え、まじ?」

「来んのならいい」

「いや!行く!行かせていただきます!!」


思わぬ流れでデートの約束ができ一気にテンションの上がるホロホロ。

本当に単純でわかりやすい。



蓮はそう思いつつも、先程の呆れ顔とは違う柔らかい表情で見つめていた。



そして週末、2人は約束通り蓮の服を選びに行った。

いうまでもなく存分に楽しんだホロホロ。

そしてわかりづらいがそれなりに楽しんだ蓮。




そしてその更に数日後。


「試着するより買ったほうが早かった」などといい、大量に服を購入したハオ。

ホロホロは安堵と共に、無駄に金を持っているハオになんともいえない怒りを抱いた。



そんなことが起こった、とある生徒達のとある日常。




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