シャーマンキング

□相思
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・・・俺は一体、何をしているのだろう。


校舎の壁に背を預け、隠れて二人のやりとりをみている際ふと我にかえった。



いや、別にはじめから覗きにくるつもりだったわけではない。

放課後にいきなり姿を消したホロホロを探していたら、たまたまこの場にはちあわせてしまっただけ。



そもそも、放課後に一緒に帰ろうといっていたのは何処のどいつだ。

言い出した本人が姿を消してどうする。





ふつふつと湧き上がるのは怒りと嫉妬。




「あの、返事は・・・すぐじゃなくていいので・・・」



そして不安。



ホロホロに告白をしてきた者は、小柄で今時には珍しい清楚な者。

美人系というよりは、可愛い系に分類されるだろう。

顔を真っ赤に染めながらも一生懸命に気持ちを口にする姿は、この告白が本当だということを裏付ける。




「・・・っ・・・」




何故コイツはこうも馬鹿なのにもてるのだろう。


この明るく正直な所に憧れや尊敬を抱く者が多いのだろうか。


毎回毎回、思うことがある。




ホロホロは何故俺を選んだのかと。




俺のような者より、あのように可愛らしい者のほうがいいはずだ。

以前テレビのCMか何かにでていた女優を、アイツは可愛いといっていた。

その女優と告白している者は、系統が同じだと思う。

アイツには、素直で可愛らしい者の方が似合うのではないか?


少なくともアイツは、そういうタイプが好きだと思う。





そんなことをぐるぐると考えていたらとっくに告白は終わっていたようで、場には誰もいなかった。







「蓮!」


どうやってここまで来たのか正直記憶が曖昧だった。

手に持っていた上履きを履き替えようとしていた所に声をかけられ、意識がかえってきた。

そうか、ここは玄関か。



「・・・ホロホロ」



そしてその玄関にはホロホロが居た。



「わりい、待たせちまって」

「・・・いや」

「まだ靴あったからさ、ここにいた方がすれ違わなくていいと思ってよ」



でもまだ居るとは思わなかった、と付け足し奴は笑う。

確かに空はもう夕暮れで真っ赤に染まっていた。

俺がはじめ帰ろうとしていた時には、まだ青い空が広がっていたというのに。




「・・・貴様のせいだ」

「え?」


貴様のせいで、帰る時間が遅くなった。



「貴様が悪い」



貴様のせいで、無駄な時間を使った。



「おい、蓮?」



貴様のせいで、あんな場面を見させられた。



「貴様のせいでっ・・・」



こんなにも、醜い感情を持ってしまった。
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