シャーマンキング

□子狼ホロ。
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あの男と会った今日の夜、なかなか俺は寝付けなかった。


あいつはこの夜をどう過ごしているのだろうと、そんなことばかり頭をよぎる。


それと同時に、何故ここまであいつが気になるのかわからなかった。





頭に耳が生え、尻尾も生えていたあいつ。

見た目で何か普通じゃないのはわかったが、俺が気になる理由はそれじゃない。







『またここに来て、一緒にお話しような!』






あの言葉が、あの声が、頭の中に何度も流されて。



「・・・はぁ・・・」


眠れない、イライラする。

このまま夜が明けるなど御免だ。


日付が変わろうとしている今、俺は民宿炎を出た。








公園までの道のり。

そこまで遠くないこの道が今日はやけに遠く感じて、気がつけば早歩きになっていた。





「あ、また会った!」





公園に入るといきなり頭上から声がした。

顔をあげ周りを見渡す。



「こっちだぜ!こっち!」


声のする方に顔を向けると、木の上の方に座っている男を見つけた。


俺と目が合うと、男は小さく身軽な体を木から下ろして俺の前に立った。


「また会えたな」




男はにこりと無邪気に俺に笑いかける。

俺は何故だかその表情に、緊張の糸がほどけたような気がした。

はぐれた我が子をみつけた親の気持ちのような、そんな感じ。

状況は違うにしろ、今適切なのはこの例えだと思う。




「貴様・・・ここで寝泊まりしているのか」


「ん、最近はそう。今までは河の近くでねてた。」


「ほぅ、河の次は公園か」


「まえに、・・・河におちそうになったから」


「は?」


なぜだかコイツは気まずそうに目を泳がせる。






「・・・寝ぞう、わるいから。だから、おちそうになった」




俯きチラチラと上目で俺をみてくる。

俺がどんな反応をしているか気になるが、直視できない、という感じだ。





「貴様は、ずっと外で寝泊まりをしているのか」


「ん、今いったとおり」


「俺が何故こんな真夜中にここまで来たか、わかるか?」


「?なぜって・・・」



俺はコイツと目線を合わせるためにその場にしゃがんだ。







「おれに会いにくるためじゃ、なかった・・・のか?」



「・・・・・・」



不安そうな顔で俺を見つめてくる。







「その通りだこの馬鹿犬!!」

「いっ!!!」





なんとなくコイツの頭に思いっきりチョップをくらわせた。





「!?お、おれ犬じゃ・・・!!」


「そんなことはどうでもいい」


「!?」

若干涙目になっているのは無視。





「居ることは確認できたからな」


「??」


状況がまるで飲み込めていないようで、男は不思議そうな顔をするばかり。

先程チョップをくらった所を手で擦り、俺をただ見ている。






「ついてこい。ここより何倍もマシな寝床に連れて行ってやる」


「え・・・でもよくしらない人についていっちゃダメだってきいた」


「じゃあついてくるな」


「あ、あ!違う!!しらない人じゃない!!」


「それでいい、ほらさっさと来い」




俺が歩き始めると、横に並びしっかりと男はついて来た。




「貴様、名は何という」


いくらか歩いて民宿の近くまで来た際、俺は問いかけた。


「ホロホロ!ホロホロってよんで」


にこりと下から笑みを向けるホロホロ。


「あぁ、俺は道蓮だ。蓮と呼べ、ホロホロ」


「わかった!れん!!」



朝になったら、あの鬼女将に何をいわれるかわからんが、





「れん、おれな?今なんかたのしいぜ!」



「・・・そうか」





とりあえず帰ろう。



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小さい子の独特な可愛さが上手く表現できなく悪戦苦闘です(笑)
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