シャーマンキング

□子狼ホロ。
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たまたま寄った公園で妙なものを見つけた。

水色の目立つ何かが、遊具で隠れるようにしてちぢこまっていたのだ。



その水色の何かは間違いなく人。

の、はずなのだが、頭には犬のような耳がくっついていて尻尾までもくっついていた。



「・・・・・・」



俺は悩んでしまった。

いや、ソレをどうするかにではなく、ソレの横を通り過ぎるかどうかに。




今日は用事があり、民宿炎に寄っていた。

さっさと用事を済ませ帰ろうとした矢先、あの鬼女将に何の因果か買い物を命じられた。

「ついで」ということで今日一晩そこに泊っていくことになったわけなのだが。


そして今、不本意ながらも買い物を済ませた帰りというわけなのだが。




早く帰らねば何をいわれるかわからないため、できれば最短のルートで帰りたいというのが俺の考え。


しかし、そのためにはこの公園を抜けなければならない。





つまり、あの水色の者の横を通り過ぎなければならなかった。



「・・・さっさと通ってしまえば大丈夫か」



意を決して足を進めて行った。

少しづつ、少しづつ、水色の者との距離が縮まっていく。

足音に反応しているのか、そうでないのか、ぴくぴくと動物の耳が動いている。

そして俺がすぐ横まで来た瞬間、俯いていた男はふと顔を上げた。

よく見るとそいつは五歳程の小さな男だった。




「それ、なんだ?」




男は小さな手を伸ばし、俺の持つ袋を指さす。


いきなり話掛けられたことに少し驚きつつも、




「・・・貴様には関係ない」



俺はそっけなく答えた。






「おれ、知ってるぜ。『すーぱー』ってところに行くとそれもらえるんだよな?」


「・・・商品をレジまで持っていって購入すればな」


「しょ・・・、れじ・・・?」



俺の言った言葉の意味がわからなかったらしく、男は首をかしげた。


そんなことには目もくれず、俺は民宿へ歩を進める。





すると、また男は話掛けてきた。



「どこいくんだ?」


「どこでも良いだろうが」


「おうち、か?」


「・・・まあ、そんなようなものだ」


あの民宿は俺の家ではないが、一応家ではある。

コイツが訪ねたのは恐らく自分の家、つまり帰る家という意味だったのだろうが。

あながち間違いでもないのだから良いだろう。





・・・というか、この男はさっきから何なのだ。



「そっか。おうちに帰るのか」


貴様は何をしている、と聞こうと口を開いたがすぐに閉じた。




(聞いたところでどうするんだ)




止まってしまっていた足を再び動かし始め、今度こそ民宿へと帰ろうとした。

すると、またあの男後ろから声を掛けてきた。


「なあ、なあってばー」


だが俺は、気づかないというようにそのまま進む。

それでも、男は何度も俺に呼びかける。




「またここに来て、また一緒にお話しような!」


その一言の後、後ろから呼びかける声は聞こえなくなった。







「おお、蓮すまねえな〜。お疲れなんよ〜」


「ああ。・・・ったく、貴様の嫁は人使いが荒すぎだ」


「んんー・・・オイラにはどうしようもないんよ」




嫁に敷かれるあわれな夫に対し軽く溜め息を一つ。

あれから少し急ぎ足で炎に帰ってきたおかげか、時間を大幅にロスせずに済んだ。



「葉、貴様・・・犬を飼ったことはあるか?」


「お、なんだ?蓮は犬でも飼うんか?」


「いや、聞いてみただけだ」


「そうか?あ、んじゃオイラ飯の準備してっから」


そういって台所にいく葉とは別に、俺は縁側にいき腰を下ろした。




『またここに来てーー・・・』


あの時、少し振り向いた時。


そのときに見えた表情が。


どことなく悲しそうな瞳だったのが、やけに脳に焼き付いて。



明日もいるのだろうか、と気にしている自分がいた。





第一話・終わり
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