シャーマンキング

□子狼ホロ。
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目がさめた。

いつもならすぐに見える青色はなくて、見えたのは茶色い壁だった。


「・・・?」


まわりを見たけど、いつものすべり台やブランコはない。

見えるのはかべだけだった。




「ん・・・」






そんなとき、すぐ横でかすかな声。



「・・・れん」


思いだした。

おれは、昨日の夜にれんにあったんだ。

そしてれんは、おれについてこいって言ってくれた。






歩いていった先は大きくて古っぽい家。

れんは、おれをその家にいれてくれて、ご飯をくれて、あったかい布団もくれた。


あったかかった。

今までの冷たさなんてぜんぜんなかった。

さびしくなかった。



まっくらな公園は何日たっても怖かったんだ。

木がいつもより大きく見えたり、がさがさって何かの音がしたり。

だから、いつも思ってた。



だれかと一緒だったらな、って。




だからあのとき会いにきてくれて、本当にうれしかった。




「れんー、朝だぞー」

「・・・るさい・・・」




朝になったら起きる。

おれはちゃんと知ってるんだ。

だから、ゆさゆさとれんの体をゆらして起こそうとしてみた。

けど、れんは起きなかった。

起きるどころかさらに布団にもぐっていく。


「れんー?」


名前をよんだけど、こんどは返事すらしてもらえない。

つまんなくてとりあえずまわりを見てみる。


「・・・そとだ」


部屋にあったしかくい窓に、いつも見ている空が見えた。


青くて、ひろくって、大きい空。

おれが起きたらまいにち見る空。

灰色だったり、赤だったり、まっくろだったりするけど、

おれは青がいちばんすき。






しばらくずっと空をみてた。

そしたらいきなり、こんこんって音がなった。

なんだろうと思い、音がしたほうに近づいてみる。


「?」


近づいた先には人の気配。



「わ、何!?」


いたのは、おれと同じくらいの高さの人。

なんか、びっくりさせちゃったみてぇ。

こっちもけっこう怖かったんだけど・・・。





「き、君は・・・ええっとどちらさまで・・・」


「おれ、ホロホロ。お前は?」


「あ、小山田まん太、です・・・」


「よろしくな!」


おれは『じこしょうかい』をした。

そして、まん太ってやつの手をぎゅってにぎる。

はじめての人にはこうするんだって、公園にくる子たちが教えてくれた。

『あくしゅ』っていうらしい。

『自己紹介』もそのときおしえてもらったんだ。



なんとなくだけど、こいつはわるい人じゃない。

だからちゃんと『あいさつ』をする。






「いえいえ、こちらこそよろし・・・ってちがーうっ!」


「?なにがちがう?」


教えてもらったとおりにしたのに、なんか間違ってたのかな。

まん太、なんか様子がおかしいし・・・。



「えっと、君は・・・」


「ホロホロ」


「うん、ホロホロ・・・は、どこから来たの?」


「どこって?」


まん太はあーとか、うーとかいって困っている。



「おれ、公園にずっといたんだ。でもな、昨日れんがここに連れてきてくれた」


「え、蓮が!?」


れんの名前をだすと、まん太はびっくりした顔をした。


「まん太、れんのこと知ってるんだ」


「うん、知ってるよ。でもなんで蓮が君を・・・」


「朝からさわがしいぞ貴様ら」


そんな話をしているときだった。

いきなり、おれのでもまん太のでもない声が聞こえたのは。

振り返ると、ずっと起きてほしかったれんが起きていた。



「れん!」

「な、いきなり飛びつくな」


嬉しくっておれは走ってれんにだきついた。


「蓮、このこどうしたの?」


おれとれんを見てだまっていたまん太が、質問をつづけた。



「どうもせん、連れてきただけだ」


「そうじゃなくて!なんで連れてきたの!?」


「俺がしたくてしたことだ。貴様には関係ないだろう」


「でも、もしアンナさんに見つかったら大変だよ」


「・・・・・・」






れんはそれから静かになっちまった。

なんだかむずかしい顔をして考えてる。


「・・・れん・・・」


何を考えてるのかわからないけど、きっとおれのせい。

きっと、おれがここに来たからだ。


「・・・っ」

なんだか不安でれんの服をにぎると

「大丈夫だ」

って、れんは頭をなでてくれた。




「・・・ん。」

それがすごく気持ちよくて、安心する。



「やっぱりその耳とか、本物?」

「おそらくな」

「わぁー・・・すごい。このこ、ずいぶん蓮になついてるんだね」


まん太はおれを見て、こんなに尻尾も振ってるし、て言った。

・・・なついてるって何だ?


「なぁれん」

「なんだ?」


握っていたれんの服をひっぱる。


「なついてるって何だ?」

「・・・。貴様は知らんでいい」


すこしたってから、れんはこう答えた。


なんで教えてくれないんだろ。

おれがまだ小さいからか?

んー・・・でもすぐに大きくなんてなれないもんなぁ。



そんなことを考えていたら、足音がした。

どんどんこっちに来てる。

れんやまん太は聞こえてないみたいだ。


おれは耳をぴくぴく動かしてその音をよくきいてみた。




なんだろう、この足音。




はじめて感じるもんじゃない。

何回か聞いたことのある、なつかしい足音。




「おーいまん太ぁ、いつまでやってんだ〜」


ひょこりと見えた顔。

あれ、こいつ・・・。




「・・・よう?」


なつかしい足音は、なつかしい人だった。



続く
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