シャーマンキング

□相思
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「蓮ー英語の宿題見せてくれー」



片手に持ったノートをひらつかせながら、奴は俺の席にやってくる。


「借しひとつだ」

「んじゃ、これで」

「ほう、これで借りを返しきれると?」

「今これくらいしかねえんだよ」



俺の前の席に腰をおろしながら眉間にしわを寄せる。



「な?頼むって、蓮の好きなピーチ味だぜ?」



ノート代に渡された飴玉を何となく見やると、包装紙には確かに桃のイラストがちりばめられていた。




「ホロホロ、貴様わかっていないな。俺が好きなのは桃まんであって、桃ではない」




まあ、桃も嫌いではないが。

こいつは桃が関連していれば何でもいいと思っている気がする。



「だー!いいじゃんか!頼むから見せてくれって、今日当たるんだよー!」

「・・・ったく」


何故こいつは当たるとわかっていてやってこないのだろうか。

そして俺は、なんど今の言葉を思ったのだろう。



飽きもせず俺とホロホロは、毎日こんなやり取りをしている。

傍から見ると喧嘩腰にいいあっているように見えるらしいが、俺たちにとってはこれが普通だ。

最初は周りの奴らも気にかけ仲裁にはいってきたりもしたが、今はもう慣れたものだ。

特別注目をあびることもなく、各々ペースも変わらずそのまま。




こんなやりとりが俺たちにとって当たり前。


俺にとっての日常。


何かあればホロホロは俺の所に来る。


いつだってコイツは、最後の最後には俺の所に来るのだ。





俺は、ホロホロに特別という優越感を感じていた。








「好きなんです」



それに気付いたのはこの瞬間だった。



「ずっと、いいなと思っていて・・・」




近すぎると気付かないというのはよくいったものだ。

無くすかもしれないという場面にいざならねば、考えもしない。

日常というのは、当たり前の中の当然で。

当然だからこそ、考えることがないのだ。





「もしよかったら・・・付き合ってもらえませんか?」



真面目な告白をされている本人は、困ったような顔をしている。

持ち前の水色の髪に手をそえ、気をまぎわらすかのように頭を軽くかいていた。
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