土九(原作)

□理想と現実は違う
2ページ/6ページ



黙って話を聞いていた土方は、溜め息と共に煙を吐き出すと煙草を灰皿に押し付けた。

「俺は参加してねーんだ。何も知らねーぞ。」

「しかし土方殿は坂田殿と仲がおよろしいようなので、何かお聞きしていないかと…。」

土方の額にぴきっと青筋がたつ。

「誰と誰が仲いいって?」

声が怒りで震えている。しかし東城は気にする様子もなく、淡々と言葉を発する。

「土方殿と坂田殿です。というかあなた方と万事屋の方々ですね。一緒に妙殿を取り戻しに来たではありませんか。」

「あれは偶々だァ!!」

ついに土方の怒りは爆発する。

「あん時万事屋の野郎が言っただろうが!!普段は付き合いなんてねェって!!お互い死んでもいいって思うくらい大嫌いだって!!」

「そういえばそのようなことを言ってましたね。思い出しました。」

呑気にそう言ってお茶を啜る東城。

「だからプライベートなんか知らねェし、知りたくもねェし!!つっーかてめェんとこの若が誰に惚れようが知ったこっちゃねェんだよ!!こっちは忙しいんだ!!餓鬼の恋愛に付き合ってる暇はねェんだよ!!つっーか帰れ!!」

語気も荒くそこまで言われて東城も引き下がることにしたようだ。

「それは失礼致しました。では。」

東城は立ち上がると障子を開けた。
土方は新しい煙草を取り出すと東城の背中に声を掛ける。

「東城さんよォ。本当に九兵衛が万事屋に惚れていて、万事屋も九兵衛に惚れていたら、あんたどうする気だ?」

「勿論、応援しますよ。私は若にはおなごとしての幸せを、掴んでもらいたいと思っております。」

そう言うと東城は客間から出て行った。

土方の手にあった煙草は口にくわえられること無く、その手で握り潰された。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ