土九(原作)
□最近の携帯電話は機能つきすぎ
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「土方さんってああ見えて結構寝相が悪いんでさァ。よくこうなってんですぜ。」
総悟は口角を上げてニヤリと笑みを浮かべた。
「何でこんな写真を…?」
「写真をネタにゆすって、副長の座奪おうかと思ってんでさァ。でもイマイチ決定打に欠けるんでィ。」
悪趣味だなァ…。
呆れて溜め息をつく九兵衛をよそに、まだまだだねィ…などと呟いている総悟。
「俺はそろそろ仕事に戻りまさァ。このことは土方さんには内緒で。」
人差し指を一本たてて唇に当てた総悟は、携帯電話をポケットにしまいながらくるりと九兵衛に背を向けた。
「ちょっと待ってくれ。」
引き止める九兵衛の言葉に振り返れば、恥ずかしそうに少し俯いている。
「その写真…全部僕の携帯に送ってくれないか?」
自分の知らない日常の、恋人の姿を保存しておく訳ですか。
「お安いご用でさァ。メルアド教えて下せェ。」
「あぁ。」
九兵衛は携帯電話を取り出すと、自分のメールアドレスを画面に表示させた。それを見ながら総悟はアドレス帳に入力していく。
その時二人の側から低い声が聞こえてきた。
「二人でこそこそと何やってんだァ?」
声の主はくわえ煙草で眉間に皺をよせている土方で。
「ありゃ?土方さん。お疲れ様でーす。」
「お疲れ様じゃねェよ!って何でこいつにアドレス教えてんだァァァァァ!?」
益々土方の眉間の皺が深くなる。
「土方さん嫉妬してんですかィ?ウゼーからさっさとあの世に逝ってくだせェ。」
いつものように総悟の台詞。
「よーし剣を抜けェェェ総悟ォォォ!!」
これまたいつものように土方の台詞。
喧嘩を始めた二人を、これまたいつものように呆れ顔で見ている九兵衛。
全くあの二人は仲が良いのか悪いのか。
沖田君。君はいつも土方君の側にいて、僕の知らない土方君を知っている。
嫉妬してしまうよ。
【終】
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