土九(原作)

□ハンデをもらって勝ってもなんか嬉しくない
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静かな林の中、ガンガンと二度木刀が当たる音が響き渡り、土方の木刀は大きく弧を描いてかなたに飛ばされカランと落ちた。

九兵衛は土方との戦いに決着をつけるべく、的である大皿に向かって打ち込もうと足を一歩踏み出した。



「うわぁぁぁぁぁ!!」

九兵衛は先程まで降り続いていた雨のせいで出来たぬかるみに足を取られ、前のめりになる。
その時、左手を掴まれ頬にひやりとした硬い感触を感じた。

一瞬何が起こったのか分からなかったが、すぐにそれが土方の的であると気づき、自分が土方の腕の中にいると分かる。


「うがあああああ!!」

九兵衛は木刀を放り出し土方から離れると右手首を掴み、土方を投げ飛ばした。
九兵衛はサッと木刀を拾うと、背負い投げされ仰向けになった土方の大皿に突進する。


「うおりゃぁぁぁぁ!!」

どこだかの星のとんでもなく高い皿は、九兵衛の手によって粉々に砕かれてしまった。




「何故敵である僕を助けた?」

九兵衛は土方を見下ろし尋ねる。

「…知るか。考えるより先に体が動いちまったんだから。」

土方はゆるゆると起き上がり立とうとするが、体に力が入らずうつ伏せに倒れ込んだ。






甘い…、甘いな。
僕が女だからといってその剣が鈍るとは…。

しかし君はこんな僕を女として見てくれるのか?
こんな僕を………。





【終】



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