その他

□嘘も優しさのひとつ
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『十四郎さんの側にいたい。』

姉上はそう言ったのに、

『知ったこっちゃねーんだよ、お前のことなんざ。』

あいつはそう言った。


あいつは姉上を振ったんだ。







江戸へ発つ日が近づいていたある日の午後、俺が家で昼寝をしていると、姉上を病院に連れて行ったと近藤さんから電話があった。
最近は発作も無く、とても元気だったのに。


「姉上!!」

俺は病室のドアを開けると中へ飛び込んだ。
病室には近藤さんもいて、姉上はベッドで横になっていたが俺の顔を見ると笑顔を見せた。

「そーちゃん。心配掛けてごめんなさいね。たいしたこと無いのよ。」

顔色も良く元気そうだ。

「近藤さんと十四郎さんが大袈裟なのよ。病院に来る程じゃ無かったのに。」

「いやいやちゃんと診てもらっといた方がいいよ。」

近藤さんが心配そうにそう言った。


買い物に行った姉上が気分が悪くなりうずくまっていたところに、近藤さんと土方さんがたまたま通り掛かって、病院に連れてきてくれたそうだ。

「念の為今日と明日入院して明後日には退院できるから。」

姉上がいつも通りの優しい笑顔を俺に向ける。

よかった。

病室にあいつがいないので近藤さんに聞いてみる。

「土方さんは?」

「一緒に来たんだけど用事があるって、病院に入らずに帰っちゃった。」

ふん。振った女がどうなろうと知ったこっちゃねーってわけですかィ。

「総悟、俺ちょっとかわや。」

そう言って近藤さんは病室を出て行った。




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