その他

□コスプレは雰囲気が大事
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鬼兵隊の高杉晋助が、夜な夜な江戸の町を徘徊している。

そんな噂が江戸中に広がっていた。

真選組の夜討ちにあい、皆別れ別れになってしまった。

生きているのか死んでいるのか何の情報も無い中、この噂は私にとって嬉しいものだ。

噂を信じ晋助様を捜す。

そんな私の前に…。

「晋助さ…ま…?」

夜中に街灯も無い暗い路地裏で見つけた愛しい人。

派手な女物の着物に手には煙管、頭に包帯を巻いた見慣れた後ろ姿が、月光に照らされ浮かび上がっている。

ただの上司だったこの人に、特別な感情を持ったのはいつからか?

「晋助様!!」

駆け寄ろうとして足を止めた。

似ているけど違う。

そう気付いた時はもう遅かった。

「………?!!」

突然まばゆいばかりの光を浴びて目が眩む。

すぐに黒い服を着た男達に取り押さえられた。

晋助様の姿をした男が近付いてくる。

「来島…また子だな。」

その声の主を知っている。
一番会いたくて、一番会いたくない男。





真選組副長、土方十四郎。












「副長!お疲れ様です。」

土方の元に山崎が駆け寄ってきた。

「まったく、なんで俺が高杉役なんだ。てめーがやりゃあいいだろうが!!背格好だって似てんだろ!!」


土方は左目に巻かれた包帯をしゅるしゅると解きながら、不機嫌きわまりない顔をしている。

「俺じゃ無理ですよ。あの雰囲気はやっぱ副長じゃ無いと。」

土方は納得したようなしていないような顔をして、パトカーに乗せられるまた子を見る。

「しかしでけェ獲物が引っかかったな。」

山崎もまた子の方を見る。また子は暴れることも無くおとなしくしていた。

「そうですね。来島また子、高杉の女ですよね。」

土方は手にしていた煙管を口にすると紫煙をくゆらせる。

「明日朝一で取り調べだ。」

山崎にそう言うと土方はパトカーに乗り込み屯所へと向かった。




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