土九(原作)

□理想と現実は違う
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土方が市中見回りから屯所に戻って来ると、一人の男が門の所で山崎と話をしていた。

長髪に糸目の男。

土方は二人に近づくと声をかける。

「あんた確か柳生の…。東城さんだったか?」

「これは土方殿。お久しぶりです。」

東城は軽く頭を下げた。

「副長、この方局長に用があるそうなんですが…。」

山崎がそう言うと土方は東城を睨み付ける。

「近藤さんに用って、あん時の借り返しに来たのか?」

東城は柳生家での対決で近藤に負けたのだ。
しかし東城は、

「いえいえ滅相も無い。」

とかぶりをふった。

「少しお聞きしたい事が。」

「近藤さんなら出張中だ。」

東城は腕を組みしばし考え込んでいたが、ならば、と口を開いた。

「土方殿に少しお話を…。」

土方は東城を客間へと通した。






「こっちは忙しいんだ。手短に話してくれ。」

座卓を挟んで向かい合って座り、土方は煙草をくわえて火をつける。東城は隊士が持ってきたお茶を一口啜った。

「実は、最近若の様子がおかしいのです。」

「九兵衛が?おかしいって何だよ。」

土方は心配そうに尋ねる。

「病気というか…、恋の病と思われます。」

「またどこかの女に惚れたか。」

大きく溜め息をつく土方。

「いえ、今回はおなごではなく…。」

「男だと?」

東城は首を縦にふる。

「お相手は坂田殿ではないかと。」

坂田殿?

「よっ、万事屋ァァァァァア!?」

土方は自分でも驚くくらいの素っ頓狂な声を出していた。






東城の話はこうだった。

あの事件以来、変わらず親友として接してくれるお妙のおかげで、九兵衛の表情はどこか柔らかくなっていた。
しかし最近は全くと言っていいほど元気がない。物思いにふけることが多く溜め息ばかり、稽古にも集中できないようだ。

いつ頃からかと考えれば丁度合コンが行われた日辺りから。
その日、九兵衛にとって大事件が起きた。銀時の手を掴むことができたのだ。
これは間違い無い。幼い頃より側にいる東城には九兵衛の心の内が手にとるように分かる。
九兵衛は恋に落ちたのだ。

しかしその事件の元となった船の事故を起こしたのは東城。操縦室にいた東城はその時の様子を見ていない。後に銀時から聞いただけだ。
で、その時の様子やその後の二人の雰囲気などを、合コン関係者に尋ね回っているのだ。
それで合コンに参加していた近藤に話を聞きに来た、と。




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