土九(原作)

□最近の携帯電話は機能つきすぎ
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「九兵衛さん。」

土方を訪ねて真選組屯所にやって来た九兵衛は、土方に会う前に庭で総悟に声を掛けられた。

「沖田君。どうかしたのか?」

「ちょっとこれ見て下せェ。」

総悟はポケットから携帯電話を取り出すと、ボタンをぽちぽちと押して画面を九兵衛に見せる。
何だ?と覗き込むとそこには、土方が白い上っ張りを着た男とお互いの胸倉を掴んでいる写真があった。どう見ても喧嘩をしている。背景からしてどこかの飲食店らしい。

「これは隊士達の間で美味いと評判になってたラーメン屋に行った時なんですがねェ。ここの親父がすっげえ頑固親父でこだわりもってて、土方さんがラーメンにマヨネーズかけたの見て怒り出してこの通り。近藤さんが間に入って収めてくれたから良かったものの、あの人の味覚音痴には困ったもんでさァ。」

「そうだな。」

何にでもマヨネーズをかけて食べる土方に少々呆れていた九兵衛は、総悟の言葉に同意する。

「次はこれでさァ。」

総悟がまた携帯電話のボタンをぽちっと押すと、画面は違う写真に変わった。
隊服姿の土方が文机に顔をうずめて、昼寝をしている写真。周りには書類が散乱している。仕事中疲れてうたた寝というところか。

「俺には昼寝するなって言うくせに、土方さんだってこの有り様ですぜェ。」


いやいや君は最初から寝る気で彼はたまたまだろう。
九兵衛がそう思っていると総悟は又、ぽちっとボタンを押した。

「これは宴会の時ので…こっちは…。」

次々変わる画面は恋人の九兵衛が見た事が無い表情の、土方のちょっと恥ずかしい写真ばかり。彼が見れば顔を赤くして怒り出すだろう。

「で…これが最後でさァ。」

そう言われて見せられた写真は、障子越しに朝日が入る部屋で就寝中の土方の写真なのだが、

「なっ…。」

九兵衛の頬が赤くなる。

着流しの帯が緩んで前が大きくはだけている。適度に筋肉のついた男らしい胸板が、露わになっていた。




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