土九(原作)

□恋に身分は関係無い
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「トシ、吸い過ぎじゃねーか?」

隣に居る近藤にそう言われて土方が自分の足元を見れば、靴でもみ消された数本の吸いがらが落ちている。
バツが悪そうに、

「後で片付けとく。」

と言うと、

「トシの気持ちは良く分かる。だから中入って一緒に飲まんか?」

と近藤の声がした。

「公私混同する気はねェ。」

土方は短くなった煙草をもみ消すとすぐに新しい煙草を吸おうとしたが、取り出した煙草の箱は既に空だった。








事の起こりは昼過ぎだった。市中見回りから帰って来ると、屯所の廊下をバタバタと大きな足音をたてて近藤さんがやって来た。

「トシィィィィイ、たった今とっつァんから電話があって、今夜上様の警護頼みたいってよォ。」

「今夜ァァァ?えらい急だな。」

もっと早く言え!!と思うが上様の警護じゃ仕方ねェ。


近藤さんと総悟率いる一番隊を上様の迎えに行かせ、俺は残りの隊士を連れて上様がお忍びでやって来る場所、『すまいる』で到着を待つ。
全く…とっつァんにも呆れるぜ。また上様をキャバクラに連れて来るなんて。

しばらくして上様がお着きになり、俺は店の扉を開けた。中に進む上様に近藤さんと総悟が付いていく。その後を付いて行こうとするととっつァんが声をかけてきた。

「トシ、すまんな、急な話でよ。」

「もうちっと早く言ってくれねーか?こっちも準備があんだから。」

俺は少しムッとした表情を見せる。

「いや〜実は将ちゃんがよォ。この前『すまいる』に来た時キャバ嬢の一人をえらく気に入ったみてーで。」

はァ?上様がキャバ嬢の一人を気に入った?
以前来た時にいたのは九兵衛とお妙、髪の長い眼鏡の女、万事屋の野郎とメガネとチャイナ。この六人。

この中で…。もしかして…。

「名前は分かんねェけど眼帯した背の低いキャバ嬢だってよ。」

悪い予感は得てして当たるもんだ。
しかし九兵衛はキャバ嬢では無い。前回はお妙に頼まれて手伝っただけだ。今、中にいるとは限らねェ。

しかし、

「でも相手がキャバ嬢だってんでずーっと悩んで黙ってて…、俺も今朝初めて聞いてよ〜。それで慌てて店に電話して…ってトシィィィ!!」

とっつァんの話を聞いてる暇はねェ!!
俺は急いで店の中に入っていった。




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