小話

□過去拍手文
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「九ちゃん、残念だったわね。」

隣にいる妙ちゃんがそう言った。

今日はお祭り。

でも土方君は祭りの警備。

他にも祭りはあるが全て仕事。

付き合いだして初めての夏なのに。

「そんなことないよ。楽しいよ。」

妙ちゃんと二人、浴衣でいろんな店を見ながら歩くのは楽しい。

でも。

僕の浴衣姿を見て欲しい、とも思う。

「凄い人ね。はぐれないようにしないと。」

そう言っていたのにはぐれてしまった。

妙ちゃんは携帯を持っていない。

妙ちゃんを探しながら歩いていると前から来る人にぶつかる。

「すみません。」

頭を下げて謝っていると別の人にぶつかった。

突然人込みから手が伸びてきた。

「何やってんだ。」

その声は、土方君。

僕は肩に手をまわされ、ぎゅっと抱き寄せられた。

「お妙が心配してたぞ。向こうで待ってる。」

妙ちゃんに会ったのか。

「携帯鳴らしたのに出ねェし。」

騒がしくて気付かなかった。

「手を離してくれ。こんな大勢の前で、恥ずかしい。」

「お前は小せェんだから、はぐれたら見つけにくいだろーが。」

でも君は見つけてくれた。

「こんなに人がいんだ。誰もいちいち見てねェよ。」

でも君は隊服で、目立っているぞ。

「それに、こうやって市民護るのが仕事だ。」

僕が人にぶつかりそうになると、肩にまわされた手に僅かに力が入る。

君に引き寄せられる。

君は市民を護る真選組副長。

でも今だけは、その手で僕だけを護ってほしい。

「九ちゃーん。ここよー。」

「もうはぐれんじゃねーぞ。」

人込みに消えそうになった土方君は、何かを思い出したように戻ってきた。

僕の耳元でささやかれる言葉。

「来年は絶対休みとるから、浴衣デートしようぜ。」

今から、来年の祭りが楽しみだ。

その時は、その手で僕だけを護ってほしい。





強い九ちゃんですが土方さんには護って欲しいのです。




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