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□夢に出た君
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あれ。ここって、中学校?

辺りをきょろきょろと忙しなく見渡すと、明らかにここは数ヶ月前まで私が通っていた中学校。

おかしいな、今私が着ているものは高校の制服。まだ慣れていないせいか、動きが若干ぎこちない。


「ん、んん」

咳払いとも付かない音を喉から出す。特に響いたりなんてしない。

周りには誰もいなくて、教室は閑散としている。窓はきっちり閉まっているのに肌寒い。

何処かで見たことのあるありふれたドラマの登場人物のようにわざとらしく腕をさする。
そんなに温まるわけではない。


何とはなしに廊下へ出て、直ぐ目の前の多目的ホールへ向かう。

なるほど。私は思わず呟いた。


さっき教室が寒く感じたのはここの窓が開いていたからだ。

私は寒い寒いと一人ごちながら足を進める。
止められていないカーテンがざわざわと肌触りの悪そうな音を出す。

邪魔に思うそれを腕で叩きながら窓を閉めようと手を伸ばす。だがそれは敵わなかった。

「あれ・・・いたんなら声かけてよ!」

私の腕を細い指で捕まえたのは大好きな親友。中学では結われていた黒く可愛らしい髪は降ろされ、今は風でさわさわとなびいている。

「あれ、ねぇちょっと、私らなんで高校の制服でここいんの?」

私が手を窓から下ろすと、白い指が離れていった。

彼女の着ている制服は私と同じものなのに、まるで何年も前からその姿を見てきたように彼女に馴染んでいる。

似合うと言ったら彼女は怒るだろうか。いつもみたいに「はっ?」と顔を歪めて。



そうこう考えていると、不意に彼女が私の制服の袖を引っ張り、ホールの真ん中辺りに立たせた。

首を傾げつつ「何?」と聞くが返事はなし。

「ちょっ、えっ?なに、どうしたの、それ」

私は指先からどんどん体温が失われていくような感覚を覚えた。

彼女の右手に握られているのは包丁。一般家庭に常備されている、あの、鈍色の、刃物。

かつ、と足音が響くと彼女は私に一歩近づいていた。

「それ、どうすんの?」

言葉ではそう聞きながら頭の片隅では彼女の黒い髪と後ろのカーテンがなびいていて綺麗だな、なんて悠長な事を考えていた。





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