Novel main

□夢のお話
1ページ/2ページ

場面は通いなれた学校。

自分の席にぼうっと立ってる。音がしない。
無音の中で、私は何も考えることなく廊下へ進む。誰もいない。

廊下のすぐ向かい側には多目的ルームがある。そこには黒板とホワイトボード、教卓、いくつかの机が並んでいた。

いつもと変わらない風景。

その空間には、特に不自然な様子もなく女子生徒が一人と男性教師が一人。ここからではあまりよく見えず、ぼんやりと映る。

教師の顔を眺めると、とても真面目な表情で何かのファイルをめくっていることが分かった。仕事だろうか。

私の足は、やはり音を立てないまま中央の辺りまで進む。ここからだと女子生徒の顔も男性教師の顔もはっきりと認識できた。

「せ ん せ い」

そう唇が動いた。

教卓の近くにいた教師は私のクラスの担当教諭。だからだろうか、無意識に言葉が出たのは。

言葉はきっと出た。でも何故か聞こえない。私の耳には届かない。自分の声すら聞き取れない。


頭の中では酷く混乱しているのに、また足は進む。






今度は女子生徒の目の前まで来た。この子も知っている。私の友達だ。

特に親しいわけでもないのに性格や口調、趣味。一瞬のうちに多くのことが脳裏に浮かんだ。

「な ん で オ ト き こ え な い の ?」

必死になって唇を動かした。普段は意識してないけど、人の声帯はとても震える。声を届けて、私の声を。と、臓器が誰かに訴えかけているかのようだ。

私は何度か無い声で呼びかけたが反応はなし。ふと相手の手を見ると学校で使用されているほうき。

「そ う じ し て た の ?」

私が今度はそう問いかけたとき、今まで何の動きも無かった女子生徒がかすかに上を向いた。

同時に私の両手も動く。

冷たい首。



私の手は、女子生徒の喉下へ届き、締め上げる。

ぎゅっと力をいれる。体育の握力テストでもこんなに強く握ったことなんて無かった。
どうして?なんで?どうして?

そんな言葉ばかりが脳内を駆け巡る。

止まらない。

見たくなんて無いのに、つい相手の顔を見てしまう。

苦しげでもない、泣いてもいない、振り払うことも無い。

ただ目をカッと見開いて、私を見つめる。

手に握っていたはずのほうきがカンッと音を立てて落ちた。

初めて音が聞こえたのに私は動けない。首に力をいれつづける。




憎んでたわけじゃない、嫌いだったわけじゃない。どうしてこんなに酷い事をするの?私は。

自分が自分でわからなくなった。

ここから逃げ出したい。でも足が動かない。

段々首に欠陥が浮き出て青くなる。酸欠で口がパクパクしている。

でも、睨むことなく私を見つめる目。感情が無いのか、魂が無いのか。







恐ろしい事をしている自分が一番怯えていることが分かった。

暫くして、体全体に力が入らなくなったのか床に崩れ落ちる。
私の手から離れる。


「あっ・・・」

やっぱり声は聞こえない。
自分のやってしまったことに恐れおののきながら先生のほうを振り返る。

まだ、さっきと変わらずファイルを凝視している。





ずっと動かなかった私の体が今更働き出した。

踵を返して廊下へ走り出し、そのまま教室へ。

誰もいなかったはずなのに今度はいろんな人が楽しげに談笑していた。

でもみんなに触れない。やっぱり声は聞こえない。私の存在が認識されていないかのようだ。

私はまた怖くなって廊下へ出る。

そして発狂。


























































(っていう感じの夢を見たの)
(何それ。こわっ!)



[君の首を締める夢を見た]
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ