アマリリス

□第3章 白と黒
2ページ/20ページ

2008年12月20日


藤崎シオンの瞳に飛び込んできたのは白い天井だった
ゆっくりと上半身を起こすと状況を確認する

「ベッド…?」

周りを見渡すも、見覚えの無い物ばかり
何が起きたか、思い出そうと考え込んだ

「ッ…!」

途端、頭痛に襲われる

「まいったな…」

―私は明日シュウと決着をつける
そう覚悟して眠ったはずだ
そこまでは覚えている
でもそこから先は…?―

どうやっても思い出せずイライラしていると、カレンダーが目に留まる

「12月…20日…?」

思い出せないはずだ。なぜならシュウと決着をつけるのは今からなのだから
シオンは立ち上がろうと力を込める

「え…?」

体が思うように動かない
そこに、ドアが開き一人の女性が姿を現した

「シオン…目が覚めたのか。」
「ライカさん」

上半身を起こしているシオンを見て、安堵しているライカをシオンはわけがわからない、という風に見つめた

「ごめんなさい、体が動かなくて…シュウと戦うどころじゃなさそうです。」

ライカは何を言っているのかわからないと言った表情だったが、すぐに納得した

「それなら仕方ないだろう。1年も眠っていれば体も動かなくなるさ。」

その言葉を受け、シオンは唖然とし、カレンダーを見直す
何度見ても、12月20日だ
しかし…

「…2008年」

シオンはライカの方に向き直り単刀直入に訪ねる

「もしかして、シュウとはライカさん1人で?」

ライカは呆れた声で返す

「ふぅ…1年経っても天然は健在か。いや、もしかして…」

ライカの表情は真剣な物になる

「シオン、お前はどこまで思い出せる?」

ライカの問に、シオンは昨日の事まで、と告げた
シオンにとっての昨日というのは、2007年12月19日の事なのだが

「そうか…持っていかれたのはシュウとの戦いの記憶だけか。」

ライカの言葉にシオンは戸惑う

「持っていかれた…?えと、私ってシュウと戦ったんですか?」
「あぁ。私たちはシュウと戦っている。まぁ結果は惨敗だ。で、お前は昏睡状態。私は倒れたお前を連れて全力疾走だ。お前ですら倒せない奴にかなうはずがない。」

ライカはベッドに腰掛けながらシオンに水を差し出す

「飲め。お前は1年間点滴だけの生活だったんだ。せめて水くらいは、な。」
「ありがとう…ございます。」

シオンはそれを素直に受け取り喉に流し込む
体にスーッと染み込む1年ぶりの水
どうやらシオンの体は思っていた以上にそれを欲していたようだった
シオンが落ち着いたのを確認するとライカは話を切り出す

「さて、話の続きだ。お前がシュウとの対決を思い出せないのは、おそらくシュウの術によるものだ。私たちが、あいつと戦う上での最大の不安要素を覚えているか?」

ライカの言葉にシオンは頷く
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ