アマリリス
□第1章 火炎魔法陣
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―ライカさんに言われるまで気づかなかった…
そういえば、1年前の今日まで私、眠ってたんだ…
でも、今日までいろいろ有りすぎたし、忘れてるのも当然といえば当然
2年前の今日、
「あなたを討ちます、この翼にかけて」
私はそう言ってあの男―秋山シュウ―に挑んだ
結果は惨敗
手も足も出なかった
挑んだ理由は簡単なこと
ライカさんと出会ったからだ
ライカさんと出会い、私はシュウの望みの危険性、そして儚さを知った
シュウには恩がある
だから私は愁にその道を歩んでほしくなくて…
で、シュウに負けて目が覚めたら1年も眠っていました、というわけ
あとから聞いた話では、あのあとすぐにライカさんが私を助けてくれて、眠っている1年間、ライカさんのお世話になりっぱなしだったらしい
シュウと共に行動したのが約1年、眠っていたのが1年
そしてライカさんと暮らして1年がたち、あと3ヶ月で私も二十歳―
シオンはそんな回想に耽りながら、事務所のデスク裏にある扉を開けて、自室に入ろうとした
「おい、シオン。鞄もそっちに持ってけ。」
ライカはシオンに向かって鞄を放り投げる
「ちょ、ライカさん!いろいろ入ってるんだから投げないでください!」
鞄を受け取り、ライカに向かって叫ぶ
「どうせノートとかそんなもんだろ?だいたい、高校中退したやつが大学に現役合格とは…大学のレベルも落ちたもんだ。」
「中退っていやな言い方ですね。私は行方不明+意識不明扱いだったんです。だから中退じゃありません!」
シオンは部屋で着替えながら抗議の声を上げた
「どの道、卒業してないんじゃ、中退と変わらんさ。お前が見つかったときの周りの驚きはすごかったな。」
「ほんとですよ。いつの間にか行方不明者から死亡者にランクアップしてましたね。」
皮肉を込めたシオンの言葉に苦笑いでライカは返す
「お前がシュウと行動を共にしている間は行方不明、そして帰ってきたかと思えば意識不明。そりゃ世間は死んだとでも思うさ。」
シオンの着替えが終わり、部屋から出てくると同時にライカは赤いトレンチコートを羽織る
「準備が出来たなら行くぞ。6時に予約している。」