アマリリス

□第5章 接続閑話
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2006年9月



夏休みが終わり、高校2年の秋がやってきた
来年の今頃は受験に追われて必死なのかな、とか考えてみたけど実感は湧かない
お気に入りの音楽を聴きながら登校する午前8時
私はこの時間が好きだった

「え…?」

唐突に嫌なイメージが私の中に流れ込んでくる
それは、そんな私の囁かな幸せをぶち壊してくれた

「今の…なに?」

イメージの内容は、今目の前に歩いている人にトラックが突っ込んでグチャグチャになっちゃうというもの
やけにリアルだ
けど、初めてじゃないしこんなのは今まででも偶にあった
それでも今回はおかしい
今まで“視えた”のは一つだけだった
なのに今回は

グチャグチャになる人
その人は無事だけど、それを助けようとしてグチャグチャになる私
その人は無事だけど、それを助けようとしてグチャグチャになる知らない人
その人を轢いたあと、気が狂ったようにトラックで暴走する運転手

他にもたくさん
とにかくたくさんイメージが流れてきて頭が痛くなった
そうこうしてる間にトラックは近付く

「逃げてください!」

何をすればいいのかわからず、私は叫んだ
その人は気がついて逃げれたみたい

「あ…」

ただ、止まりきれないトラックは私に突っ込んでくる
自分でもわかる
もう、助からない
私の人生ここまでか
ごめんなさい、リク姉さん
周りの人が何か言ってるけど、聞こえない
走馬灯なんか流れないじゃん
嘘つき
本当に怖いと、涙も出ない

「━━━━━━」

自分でも何を言ったのかはわからない
けど、私がその時思ったのは
死にたくない
ただそれだけ
次の瞬間、奇跡が起きた
私とトラックの間に和服姿の大柄な男性が立っている
その人は左手を突き出すとトラックに軽く押し当てるようにして、いとも簡単にトラックを止めた

「あ、ありがとうございま…す?」

その光景に目を疑ったけど、お礼はしなきゃと思って顔を上げたら、もうそこには男性は居なかった
代わりに、耳元に声が残っている

―今から浜辺に来るがよい―

脅しともとれそうなその言葉を、私は信じてみようと思った
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