アマリリス

□第3章 白と黒
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ビルだらけの都会とは少し違う、月のよく見える丘に“彼”は立っていた

「ここに居たんですね、■■■」
「紫音…か。」

その隣に私は座る
■■■は私を指差し、敬語、とだけ呟いた
そういえば彼は敬語を嫌っていた
でも…

「やっぱり難しい…よ。敬語以外で話すのなんて、すごく久しぶり。」
「なら、俺だけが知ってる紫音、ってわけだ。」

■■■はからかうようにニヤリと笑みを浮かべる

「そうだね…うん、キミだけ。」

少し考えこんでから返答した
ため息をつきながら“彼”は座る

「なぁ、紫音。お前の力が俺に封印された理由、知ってるか?」
「シュウは“強すぎる力は身を滅ぼす”って言ってたけど?」

私は首を傾げる

「違うな。お前の力が人工的なものなら、そうかもしれない。けど、お前の力は生まれつきお前に宿っていた力だ。」

■■■は諭すように言う

「シュウは、お前の力を恐れているんだよ。お前の力はいずれアイツを超える。それを防ぐために、俺という“器”に力を封じたんだ。」

そこまで言うと■■■は私から月へと視線を動かした

「だからさ、紫音…俺は“時”が来たらお前に力を還すよ。それまでお前は“天使”のままで居てくれ。たぶん俺が、お前の…」

―初めての相手だから―

やけに頭に残る言葉
あとに続く言葉が無ければ勘違いしていたかもしれない、その言葉

「だから、俺以外のやつを殺すなよ。お前に殺しは似合わねぇ。」

彼はそう言った
私が殺していいのは彼だけだと
彼は私に殺されることを仕方なしとし、私に彼以外の血で手を染めて欲しくないと

「うん、わかった。じゃあ、キミも約束して。」

だから、言ってやった

「私がキミを殺さなくても済む方法を一緒に探す、って。」

彼の表情は少しだけ驚いたものになり、空を仰いだ

「そうくるか…あー、わかったよ。」

けどな、と彼は続ける

「見つかるより早く“時”が来たら諦めてくれ。どの道俺が死ぬ以外に力を還す方法はねぇんだ。それなら“時”が来ないようにするしかないだろ?」

私は声を荒げてしまった

「時って何!どうして私に力を還さなきゃいけないの!?
どうすれば…」

時は来ないの!と
彼はそんな私の頭にポン、と手を置いた

「それを、一緒に探すんだろ?」

そう微笑んだ彼の目はとても優しくて、他の事なんてどうでもいいと思った

「うん、そだね…」

あぁ、思い出した
どうしてこんな大切な人の名前を忘れていたんだろう

「約束だよ」

続けて私は彼の名前を告げた

「   」



*********

コレは、藤崎シオンの“夢”
記憶の断片にも似たその夢は彼の名前を呼ぶ瞬間、無情にも覚めてしまった
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