アマリリス
□序章
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一人の少女が夜の浜辺を歩く
雨の中、傘もささずに
学校帰りのような、制服のまま
―雨がうるさい―
少女が歩く先には、大柄な和服の男性がいる
「決心はついたか?」
男性の問いに、少女は頷く
「そうか。では、名前を教えてくれ。」
「藤崎…シオンです。」
少女はそう名乗った
「シオンか。詩音…いや、紫音だな。お前の真名は《紫音(しおん)》だ。」
男性はそう言うと、空中に《紫音》という字を指で書いた
空中に書かれた文字は不思議なことに、文字としてその場に残る
「紫音、ですか。」
「あぁ。
終焉の死神《紫音》
これがお前だ。」
男性は手を差し伸べる
「歓迎するよ、紫音。
ようこそ、非日常の世界へ。」
シオン―否、紫音は微笑み、その手をとった
「よろしく…お願いします。」
2006年9月
藤崎シオン 16歳