アマリリス
□第4章 灼熱の夢
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ライカの赤い車は警察署の前に止まった
「警察…ですか?」
戸惑うようなシオンの声
「あぁ、一番の情報源だよ。」
「簡単に教えてくれるとは思わないんですけど。」
ライカを責めるような目でみる
「そんな目でみるな。ちゃんと考えはある。そうだな、シオン、ハッキングとかできるか?」
「残念、出来ませんよ。私、コンピューターとかダメなんです、本当に。」
シオンは首を左右に振りながら、ライカに訴えた
「って、もしかしてライカさん…」
「ハッキングは、私もでも出来ないぞ?出来たらワザワザ警察署まで来たりするもんか。お前に頼みたかったのは別の事だよ。」
シオンの予想を否定し、ライカは少し考え込む
うん、そうだな。
と言う呟きのあと、ライカは顔を上げてシオンを見た
「ならさ、直接調べてきてくれないか?」
「なにを…ですか?」
もっともな疑問
どうやらハッキングで得ようとした情報を直接聞きに行かせるつもりのようだ
「夜月リクの過去が知りたい。お前が知っている事も含めて、教えてくれ。私の考えが正しければ…」
目を伏せるライカ
顔を強ばらせるシオン
「夜月リクは何らかの形で事件に関与している。」
シオンは言葉を失う
「それは、犯人ではなく、被害者としてかもしれない。たまたま現場に居合わせてしまい脅されているとか、洗脳されていても不思議ではない。」
ライカの先程の言葉の意味が今わかった
―戦えないと思ったならば、逃げても構わない―
リクが主犯にせよ、洗脳されているにせよ、リクとシオンが戦う可能性は十分にあるのだから
それでも…
「私は、ギリギリまでリク姉さんを信じます。リク姉さんは、人を殺せるような人間じゃない。だから、私は信じます。」
だから
「リク姉さんの事、調べます。潔白を証明するために。」
そんなシオンの目を見て、ライカは返す
「すまない、辛い役を。だが、私もギリギリまで協力しよう。もし仮に万が一、夜月が洗脳されていても、ギリギリまで洗脳を解く方法を探す。脅されていたのならば、主犯を必ず突き止める。手に入った情報を元に、再び推理する。だが、」
ライカは言葉を切った
「お前が辛いのなら、この件に関わるのは辞めてもいい。事務所でも言ったが、私たちの仕事は調査だ。事件の解決じゃない。」
「大丈夫ですよ、私は。」
そうか、と呟くとライカは切り替えたように髪をかきあげた
「よし、今は情報収集だ。2時間後にここに集まるぞ。」
言うが早いか、ライカは警察署に乗り込んでいく
シオンも駆け出した