雨が降った。
ざぁざぁざぁざぁ
耳障りな音と共にソイツらは俺の身体に冷たくあたる。
おかげで俺は髪も服も濡れて、惨めな溝鼠と化した。
でも、そんなこと全然気にならなくて。




「どこ行くの?」




ただその言葉だけしか出てこなかった。
置いていかないでよ、
俺たちの傍で最高のプレーを見続けるって言ったじゃないか。
ずるいよ、ずるすぎるよ。
ごめんねだなんて、そんな言葉が聞きたいんじゃないんだ。
ありがとうだなんて、そんなこと言われても困る。

年を重ねる度に笑い方が大人しくなる君。
日々を重ねる度に薄くなる背中。
時を重ねる度に広がっていく距離。

ああ、何てもどかしい。
必死に繋ぎ止めようとその冷たい手を握り締めても、
君は俺たちから遠いその場所を見つめるようになった。




「行かないでよ」




せめて、せめて、
傍に居なくても存在さえしてくれたら、それでいい。
なのにどうしてそれさえも叶わないの。
こんな、今にも風にのって飛んでいきそうな白い粉の君なんて。
俺たちには必要ない。
温かい、一緒に笑い会える君が必要なんだ。




「戻ってきてよ」










.
天に昇る煙は、何も答えなかった。








きっともう、この声は君には届かない。
だってそうだろう?
もはや俺たちのことなんて、
君は忘れて空の彼方に逝ってしまったんだから。















.


ブックマーク|教える
訪問者39726人目




©フォレストページ