戦国金剛石之本棚

□明智×毛利 短編
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死神が桃丸とゐふた頃

(小光→就)




「桃丸?」

後ろに引かれ、振り向くとしっかりと衣の裾が握られていた。

小さな手をとり握り返すと、落ち着いたようで、また歩きだした。

「どうかしたのか?」

小さく首を振る。

「何を畏れておる。ゆうてみろ」

先を促すと、拙い声が喋りだした。


「もとなりさま、今日も、いっしょに、ねてくれま、せんか…?」


だんだん萎む声。

あぁ、まだこんなにも幼い児。

「きのうも、その前も、もとなりさま、ねていらっしゃらないから…近くで見ていないと、わたくし、しんぱいで…おからだ、だいじにしなければ…」
「もうよい、分かった」


びくり


細い肩が震え、握る手がじっとりと汗ばむ。

また、やった。
何故。
強く当たっているつもりはないのに。

「桃丸、大丈夫だ。怯えることはない。我は怒ってなどおらぬゆえ」

小さな溜め息。
嘆息ともとれるそれに、申し訳なさも、少し、感じた。


「今日は、我も早く床へ着こう
だが、
貴様も、もうそんな歳ではないのだから、添い寝をせがむなど…」

後ろの影が狼狽し、黙り込む。

図星か、と口を開こうとすれば、
違います、と囁く声が。

きちんと聞いてやろうと振り向き、赤い目と頬に怯んでしまった。

「違うのです…私は、ただ…貴方様を失いたくないのです…!」

ひしと足にしがみつき、訴える姿に、今度は我が狼狽を見せる番。

「桃丸……」

「元就様が根を詰めていらっしゃるから…本当は、邪魔などしたくはないのです……でも…元就様、どんどん線が細くなって…しまって……」

唖然、と
するほかない。
部下の誰にも指摘されぬ事実。

こんな児にいとも容易く…

「…すまなかった」

心より、思う。

「自らにも気を配ると、約束しよう」

この小さな児に、誓う。


「見張っておるがよい」


笑う、

上手く、笑みになったのか、解らないが。
この目の前の笑顔、ならば、きっと。


「はい、元就様。いつまでも、おそばに」


我に死ぬなと訴えたあの児は
見目麗しき、死神に、なった。





(我に死ぬなと)
(私が殺すと)
(貴方は、死なないと)
(我の生を導く、)

(死神)


――――――――

(10.5.7 初)


桃丸です。
光秀のちみっこいころ。

歳の差はうふふ←
光秀は出生が定かじゃないミステリーな奴。


何がいいたいかというと
貴方はしなないで、
貴方を殺す総てを殺すから。
と。

なるんですよまったく可愛い奴よ(殴


.
 

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