最期之物語之本棚ver.Z
□ヴィン×クラ 短編
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Dear my sweet !
(ヴィンクラ+ルクレツィア)
今夜は、少し肌寒い。
先程外したマントを見遣るが、……
まぁ、付けなくても大丈夫だろうという結論に至る。
祠の中には星月の光は届かない。
ここに眠る、私の大切な人が命を燃やした明かりが唯一。
いつもなら静かな2人の世界に、
今日は訪問者がいた。
隣で私のマントに包まり寝息をたてる青年である。
(青年といっても25をとうに数えた大の大人か。)
時が既に止まっている私達からすれば息子の年齢に当たるのだろうか。
嫌でも、昔を思い起こさせる。
彼女も、そうらしい。
発する光が安定していない。
「ルクレツィア、安心していい。彼は大丈夫。私の、仲間だから」
『あなたの仲間?なんだ、あなたの口からそんな言葉が出てくるようになったのね』
安心した、と。
青年を意識してか、落ち着いた光量に安定した。
そうだ。私の仲間。
そして。それに加えた目下の悩み。
『ということは、…クス。随分懐かれているようね』
眉を潜める。
むしろ仏頂面をつくる。
『そんな怖い顔しないで。よかったじゃない。私は、嬉しいのよ』
「だが、私には…」
消えない罪。
重い罰。
君と共にいようと決めた…
『もう、頑固ねぇ。私はいいのよ、あなたが十分側にいてくれた』
「ルクレツィア…!」
『彼も、ひとりなのでしょう?』
彼女は、私の言葉に反応することなく。
柔らかく私に降り注いでくる。
『あなたが突っぱねることが出来ないなんて、彼も相当頑固なのね。…もしくは、それよりも、彼に強く当たれない理由があるのか。あるとすれば、彼に自分が見えてしまったのね』
『何も言わなくていいわ。あなたはそういう人なんだから。でも、彼に道を教えてあげて。彼もさ迷っているんでしょう?あなたしか、いないのよ?』
『私にも、すべてか見透かせる訳ではないのよ。あなたの事なら、少しわかるだけ。少しだけ、後の事なんてわからないけれど、それだけは合ってるでしょう?』
『あなたが彼に向ける感情が、彼と…あなたを救うのよ。』
それを言って、彼女は黙ってしまった。
柔らかく、柔らかく降り注ぐ。
「《私》は…!」
「ヴィンセント…?」
振り向けば、寝ぼけた顔をした彼が体を起こして、こちらを向いていた。
「…すまない。起こしたか。」
「いや…いいんだ。なにかあったのか?」
ルクレツィア…
君にもわからないことがあるというのは正しいらしい。
私が彼に向けるのは、
同情と懐旧の入り混じった、別のものだ。
私が彼に見ているのは、私ではないんだ…
「…ルクレツィア…君だ。」
「ぇ…?ッ!?」
寄ってきた青年に手を伸ばし、一気に引き込む。
すまない、ルクレツィア。
君の前でこんな惨めな姿を曝す。
「ちょっ…きこえな、…なんだって!?」
「クラウド、キスがしたい。」
「はぁ!!?」
すまない、ルクレツィア。
私は、彼からもう君すらも見出だせないでいる。
「そっ…、れ…くらい、言わなくたって、していい……ッ」
いつもなら、キスの時はマントで隠すのだけど、
今日は、君に誓うから。
降る光が一瞬だけ、明滅した。
「ッは、……なんか…いつもより優しい…?」
「あぁ、私の愛をすべて込めた。」
「!…ぁ…あのなぁっ!!よくそんな恥ずかしいせりふを…!」
誓うよ、ルクレツィア。
君を騙した訳じゃないけれど、
勝手に愛してしまったのだけれど、
君の言ったことは、すべて事実だから。
幸せに、なるから―――。
「ちょっ、えぇ…!?なんで泣くんだよ…!」
「あんたが泣く姿なんて見たことなかったのに…」
(あなたがそんな風に泣くなんて、知らなかったわ…)
昔聞いた声に被る。
あぁ、苦しい。
私を突き破らんほどの、熱情。
『幸せに、なりなさい。』
ルクレツィア、すまない。
私は、《私》を置いていくから。
大切な君へ、彼を見せた。
私は、もう十分に…
「クラウド、私は幸せだ」
「…そっか。俺はあんたが珍しく泣いた所為で焦ったけどな」
柔らかな光と、柔らかな声と、
私にくれたすべては大切に。
私はもう大丈夫。
やっと、君に言える日が来た。
「俺も…幸せだから」
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(2010.8.18 初)
ヴィンセントが
ただの甘ったれになったorz
ヴィンセントはちゃんとルクレツィアに誓ったんだろうと思います。
ルクレツィアにありがとうと伝えたと思います。
きっとルクレツィアは2人のいい母だと信じています。
ついでにルクレツィアの声はヴィンセントにしか届いてないといい←
そんなお話でした!
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