りんごあめ
□いはけき君の花にも優(まさ)れり
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「あけましておめでとうございます」
襖の向こうから現れた少女は、艶やかな振り袖に身を包み
床にちょこんと手をついて丁寧に頭を下げた
こちらも挨拶を返せばひょいと小さな頭が上を向く
「元旦からもうお仕事ですか?」
部屋に散らばる薬草やすり鉢を見た彼女は少し驚いた様子でそう尋ねた
ええ、まぁなどと適当に答えながら作業を再開すると、すぐにまた明るい声が響く
「わぁ、綺麗な椿!」
花の側に寄ってじっと見つめる彼女に、椿は油や血止め薬になるのだと教えてやった
「一つ、差し上げましょうか」
「え、良いんですか?」
途端ぱっと顔を輝かせた彼女は期待の眼差しを此方に寄越す
「お年玉、ですよ」
言ってから【お年玉】は少しやりすぎたか、と少女を盗み見るが
本人はにこにこと椿を手に乗せそっと触れては眺めるを繰り返している
普段は子ども扱いするなだなんだと喚いて拗ねるくせに、今は花に夢中でそんな扱いにも気づかない
「やはり、まだ‥幼子ということか」
花を一つ余分に貰ってきたのは正解だったようだと、綻ぶ口元を隠しもせず再びすりこぎを手に取った
終