りんごあめ

□拡がりもしなきゃ縮みもしない
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自分の身体を黒板に押し付ける腕は想像以上にたくましくて、彼の中に"男"を意識せざるを得なかった

学生服に身を包む彼に胸を高鳴らせている教師の私は不純だろうか

存外、そんな事を気にする自分を隠したくて
黙ったまま彼を見据える


「…何か言うことないんですか」



怪訝そうに、不安そうに言葉を紡ぐこの低い声にまた時めいている自分はもうお仕舞いだと思った



「鈴木くん、ドラマの見すぎじゃない?」



それでもこんな捻くれた事しか言えずに作り笑いを浮かべる私は
あぁ、なんて可愛くない女


ふいに首筋を襲う痛みに今作ったはずの笑顔が崩れかける

抵抗なんてできなかった

だって、小説の様な展開をずっと望んでいたのは私の方

このまま二人で堕ちる処まで堕ちてしまえたら…



すっと首筋から引いた熱は、そんな儚い思いも連れ去ってしまった

その寂しさからか何なのか、つい思った言葉が零れ出る



「若いって素敵ね」



世間体も何も無視して欲する物に向かっていける



「でも、幼いってズルい」



興味がなくなれば何の未練も残さず相手を置き去りにしていける


二度目の捻くれた台詞は今度こそ彼を遠ざけてしまった
すっと肩から離される腕

でもきっと私は間違ってない
ほんの気まぐれを貫くにはあまりにもリスクが大きすぎるから



「日直日誌、書けたら職員室までよろしくね」



「もう、できてます…」



「そう、ありがと」




昨日の事なんて嘘だったみたいにいつもの朝はやってくる
淡々と連絡事項を告げながらそっと彼を盗み見ると、普段と変わらない無表情な顔がそこにあった


やっぱりこれで良かったんだと納得しようとする自分に、どうしようもなく悲しくなった






















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