りんごあめ

□歳というのは困ったもので
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教室に差す光が赤みを帯びる
聞こえてくるのは下校していく生徒たちの声だけ

黒板に押し付けた担任は、意外にも落ち着いた様子でこっちを見上げていた



「…何か言うことないんですか」


「確かに、ここは動揺でもして、"どうしたの?"なんて見当違いな台詞を言うところかもね」



鈴木くん、ドラマの見すぎじゃない?と薄く笑うこの人を、どうしても負かしたくなった

白い首筋に噛みついてこれでもかってくらいに痕を付けてやる


我ながらなんて馬鹿げた行為だろうと思った
それでも、たかが鬱血痕に少し満足している自分はやっぱり馬鹿なんだろう

視線を彼女の首から顔に移せば相変わらずの微笑

綺麗に弧を描いたその唇はポツリと呟いた



「若いって素敵ね」




結局俺は、認めてほしかっただけなのかもしれない




「でも、幼いってズルい」



自分だって生徒じゃなく一人の男なんだと

だって、俺はちゃんと彼女を女として見てるのに、こんなのフェアじゃない


でもその未熟な願いはこんな事では叶わないらしい

諦めにも似た思いで拘束する腕を解けば彼女は小さく溜め息を吐いた



「日直日誌、書けたら職員室までよろしくね」


「もう、できてます…」


「そう、ありがと」




強すぎるほどの日差しが教室を照らす
いつもの朝、いつもの面子
聞こえてくるのは、連絡事項を告げる今までと何も変わらない担任の声

昨日しっかり付けたはずの華の痕は跡形もなく消えていて

ただ纏わりつくような焦燥感だけが俺の胸に染みを作っていた






















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