小説2

□魔王
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そこはきらびやかな電飾が綺麗に見栄えがする様にあちこちちりばめられた俗にいう歓楽街。
この部屋にいる人々もまたそれに負けないくらいに豪華な装飾を施した身なりをしていて実に華やかだ。
そんな場所に必ずといっていいほど裏社会というのは存在する。

眩しい部屋の一角に赤いビロードが引かれこちらからは見えないようになっており見るからに怪しい。
しかし俺は躊躇なくそれに手をかけるとシャっという音と共にゆったりとした布の感触を手放し足を踏み入れた。



「おい、もっとゆっくり開けろ。警察かとおもうじゃねぇか…」

相変わらず図体だけでかいガードマンだなと呆れながらもそれを顔には出さずに俺は笑顔で答えた。

「平気だって。ここがばれる事はないさ。それよりボスは?」

適当にそいつとの会話を終わらせ更に奥にある扉へと視線を向ける。

「あぁ…なんだか変わった客人が来てるらしいぜ。取り込み中だ。」

「ふぅん…」

まぁ特に驚く事もなくいつもと変わらずボスの部屋の前で待つ。
うちのボスは裏賭場を仕切っている存在。
ソレゆえに毎日と言っていいほど訪問客は耐えない。

(ほとんど裏の住人ばかりだけどな…)

暫く部屋の前でぼーっと扉が開くのを待った。















***

「ふむ…確かにここで賭けチェスは随時行っておりますが…」

そのゆったりと髭を蓄えたいかにもマフィア風の男はじろりとルルーシュを足の先から服装、身形を眺めた。
それは随分となれた、まるで人を値踏みするような目つきで気分が悪い。
しかしそれもこの場所ではあたりまえの事なのだろうが。

「どこでここを知られたか知りませんが…ここでの賭けチェスは道楽貴族のただの遊戯な様なもの…
一般市民が手を出せば痛い目にあいますぞ?」

「そうですか…。やはり金を持て余した貴族同士が戯れで行っているだけでしたか…。
だったら若い打ち手が挑戦したいという理由だけで酔狂な余興だと興味を抱く貴族もいるかもしれませんよ。」

その言葉を聞いて男はニヤリと笑った。


「く…ハハハ…言いますなぁ…口が達者なのは若い故の過ちか…それとも相当自信がおありかな?
しかし…参加するにはそれ相応の資産が必要ですぞ。
なんせ賭けチェスですからね…」

その言葉にルルーシュは初めて眉をあげた。

「ふむ…。」

正直いって今の全財産はほぼ生活費のみであった。
いつものように賭けチェスで財布を潤わせて貰おうかと思いここへ足を運んだのだが…。
やはり貴族経由の賭場だとそれなりに動く金額も大きいらしい。
てっとり早く稼げるようにとここを選んだのは間違いだっただろうか。

「その様子じゃ担保になるような物は持ってない御様子ですが…しかしそれが別に”物 ”でなくてもかまいませんよ…?」

チラリと男の視線はルルーシュのすぐ後ろへと向けられた。
それまで会話に参加しなかった少女の方へと。
その言葉にルルーシュは一瞬だけ眉間に皺を寄せて悪意を示す。
しかしすぐに仮面のような笑顔を作り出し男を牽制した。

「これだけは譲れないものでね…」

それだけ言って胸ヤケがするようなこの場所から早急に立ち去ろうと考えていたが次の言葉は意外な所から発せられた。

「ふ…私を担保にすればいいじゃないか?」

ニコリと笑う珍しい緑色の髪の少女。
それだけで周囲に華が咲くような雰囲気になる。
その瞳は琥珀の色をしていてまさに神秘的、としか表現のしようがない。

「お前…何を馬鹿な事を…」

「私なら大丈夫だ。へたな金持ちよりもマフィアという者は義理堅く約束は守る輩が多い。手荒な真似はしないだろう。なぁ?」

そういうと少女は髭の男へと視線を向けた。
男は嬉しそうにニヤリとすると次の瞬間には声を出して笑っていた。

「ク…ハッハッハ…これはこれは…黙って座っていればか弱き乙女のような少女だと思っていましたが…とんだじゃじゃ馬をお飼いで…。」

ルルーシュはその台詞にむっとすると口を開いて反論を試みるがまたしてもそれは男によって遮られた。

「しかし黙って従順なだけの女が利口だとは思えないものでね…気に入りましたよ…貴女がていのいい人質になってくださるなら…貴女のつれの担保は私が全額払いましょう。」

少女はそれを聞いて目を細めるとルルーシュに視線を返した。
それは強情な意思を表す色で…。

「はぁ…まったくお前は………わかりました。その条件、飲みましょう。」

それを聞いて髭の男は嬉しそうに笑った。
















***

(今日はやけに長いな…)

そんな事を思っていたら急に部屋の中からボスの声が聞こえた。
気のせいではなく何度も名前を呼ばれたので扉をノックしてゆっくりとそれを開く。

「呼びましたかボス?」

客人の顔をなるべく見ないようにしたがどうも今日はその必要なないらしい。
別にどこぞのお偉いさんでも警察に見つかれば面倒になるような人物にはとてもみえない二人組みだった。
どちらも美しく動くだけで絵になりそうな若い男女。
男のほうは笑顔でいるが何故か不機嫌なオーラを感じる。
逆に女はとても機嫌のいい笑顔で笑っている。
その表情に惹かれるようにじっと眺めていると目があいニコリと笑われてしまった。
しかしそれもまたいい…。

「おい。この二人を客室に案内しろ。」

惚けているとボスに声をかけられハッとする。

「は…はい。わかりました。」

言われた通り「こちらへ。」とその男女に声をかけて入ってきた扉とは別の扉へと促した。
ボスに一度会釈をすると扉を閉める。
客室という事は一応ボスの客人になるのだろうか。
長い廊下を歩きながら男の方をチラリと見ると自分と大して変わらないくらいの歳格好をしている。
ここにくるのは大人ばかりでそれが珍しくついジロジロと見てしまった。

「俺に何かついているか?」

男は鼻で笑うかの様に俺を見るとそう口を開いた。

「いえ…別に。」

ジロジロ見ていたのが悪かったのだろうか。
不機嫌なオーラがいっそう強くなったようなきがする…。

「おい、人に当たるな…まったく大人げない奴だな。」

淀んだその空気を一変するように喋りだしたのは女の方だった。
想像よりも凛と透き通った声が耳によく通る。
こちらは男よりも若くみえるが何故だろう…その容姿ほどは子供にはみえない。

「お前…誰のせいだと…」

「無論、私のせいだが?」

男の不機嫌な言葉に女は嬉しそうにくすくすと笑った。

内容を知らされていない俺はその意味を理解できなかったが男のほうがボスと何か取引をしたのだろうな…と気づいた。
まぁ、よくある事だ。
しかし普通はこの場合女の方が不機嫌になるのが常なのだが…。
そんな事を考えながら暫く歩くと目的の扉までたどり着いた。

「ここが客室です。どうぞ明日の賭場まで御自由にお使いください。それと…外出は御遠慮ください。」

それだけ告げると俺はボスの元へと再び歩き出した。














***
案内された部屋はそれほど豪華でもないが質素でもない。
細かいところにシンプルなデザインが施されていてルルーシュ的には落ち着くような部屋だった。
しかし今はそれを堪能する余裕はなく扉が閉められるとすぐさまC.C.に食って掛かった。

「おい!お前何を考えているんだ…!」

しかしC.C.と呼ばれた少女はニヤニヤ笑って答えようとしない。

「くッ……。」

暫く沈黙が続くがしょうがないな…と言う風にC.C.は口を開いた。

「路銀がつきそうなんだろう?だったらこうするのが一番だ。それとも…お前は自分が負けるとでも思っているのか?」

「誰が!!」

ルルーシュはさらに眉間に皺を寄せるとC.C.に手を伸ばし傍にあったベッドへと押し倒した。
しかしC.C.はそれにも臆せずルルーシュの頬へと手を伸ばし愛しそうに撫でた。

「大方私が他の男の物になる所でも想像したんだろ…?
相変わらず私の魔王様はそのへんが未熟者だな…。」

「う…うるさい!」

図星をつかれたルルーシュはもう黙れという風にC.C.の唇を奪った。

「んッ…ぅんッ…」

強引に舌を差し入れ唾液を絡める。
突然だったので息がうまくできないのだろう。
C.C.はルルーシュの胸を押し返すと逃げるようにしてそれを離した。

「ぷはっ…」

奪われた酸素を取り込むように息をすると涙を浮かべながらルルーシュを見上げた。

「お前は本当に強引だな…」

その台詞に「どっちが…」と答えると再び不機嫌そうな顔をして唇を重ねた。


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***
魔王魔女のお話ですかね?
イチャイチャが少なくてすいません。
二人の心理描写をかきたくてかきはじめたのですが
難しい…
次はもっと頑張ります!(ルルC的に

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