小説2

□魔王2
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扉をあけるとそこには昨晩ここまで案内してくれたあの少年の姿があった。

「もう昼ですよ。あまりに遅いので勝手に持って来ました。」

その手にはなにやら美味しそうな匂いを漂わせたカートを押している。

「あ…あぁすまない。ツレがなかなか起きなくてな。」

ありがとうと軽く会釈をして彼を部屋へと招きいれた。
少年はカラカラとそれを押しながら部屋の奥へと進むとベットの横のテーブルの上に蓋のされた料理を手早く並べていく。
そしてそれが終わると同じようにカートを押してひとこと「一時間後に取りに来ます」といって部屋を出て行った。

少年が部屋をでるとベットからがばりと起き上がりC.C.は料理の蓋を外してさっそく側にあったフォークに手を伸ばした。

「オイ。」

しかしルルーシュはそれを抑制するように声をかけるとそのフォークを掴み損ねた手を掴んでベットへと押し倒した。

「コラッ…私は朝食を食べるぅんッ」

強引に唇を奪って言葉を封じるが再びそれを離すと嫌だといわんばかりに胸を押し返されてしまう。

(最悪だ……)

愚痴るように内心思うがもはやC.C.にその気はなくルルーシュが力無くのしかかると『重い』と文句を言われ更には足蹴にされてごろりと仰向けに天上を眺めた。
C.C.はそんなルルーシュには目もくれず、今はもうすっかりテーブルの上の料理に夢中である。

「へー期待はしていなかったが結構良いモノ食べているな…やはりマフィアなりのプライドなんだろうか。」

言われてルルーシュもそちらへと興味を向けた。
みれば確かに朝食としては割りと豪華な物が並んでいる。
白身魚のムニエルをパイで包んだ物に温かいスープ、それとデザートだろう、ココアパウダーをまぶした加熱した林檎とバニラアイスが添えてある。

「ほら、何してるんだルルーシュ。全部食べてしまうぞ?」

C.C.はまだ動かない彼にこちらにこいと促すとさっそくそれを一口、口に含んだ。
C.C.の場合それが冗談ではないと理解しているルルーシュは溜息をひとつ吐くとゆっくりと身体を起こしてそのままベットへ腰掛けた。
そして側にあるフォークを手にとりC.C.を同じように食事を始めたのだった。

****

「ランペルージさん。時間です。」

扉の外から名前を呼ばれて「今行く。」と返事をする。
日は大分傾き次第に外が暗くなっている時間であった。
これから賭けチェスの催しものが開催される。
時間にあわせて丁度準備を終了させたルルーシュにいつもの少年が声をかけて呼びにきたのだ。

「時間だな。しっかり勝ってこい。
なんといっても私がかかっているんだからな。」

C.C.は台詞とは裏腹にまるで他人事のようにクスクス笑うとルルーシュに言葉を吐いた。

「言われなくとも。」

一言、返事をするとルルーシュはC.C.に視線を向け軽くその紋章が描かれている額にキスを落として『言ってくる。』と告げた。
それにC.C.も『あぁ、行ってらっしゃい。』と呟くように返した。



「待たせたな。」

「いえ、時間ぴったりです。」

少年は得に愛想笑いをするでもなくルルーシュに告げた。
そしてそのままルルーシュの出てきた部屋に鍵をかける。

「すいませんがお連れの女性が逃げ出さないように鍵はかけさせてもらいます。」

それにルルーシュは顔を顰めてしまう。
C.C.が逃げ出すと危惧された事ではなく自分が負けると思われている事実に。
しかしそれが少年の仕事なのだろう。
淡々と何の感情も表さずに三つの鍵全てをしっかりかけるとルルーシュにこちらです、と手で表し歩きはじめた。



案内された会場は小さなホールなような所で激しい盛り上がりをみせるカジノとは違い、少し落ち着いていた。
しかしその落ち着きの中にルルーシュはかつての王の間…幼い頃、王位継承権を返上した時のような雰囲気を感じ取っていた。

(まったく…腹の中では何を考えているのか…。胸糞悪い。)

貴族ばかりが集まったこの場は裏取引やら情報を集めるのに最適な場所となっているのだろう。
ルルーシュは案内されるがまま少し他と比べて高くなっている台へと上がると目の前に用意されていた椅子へと腰掛ける。
相手側の席には既に中堅の貴族であろう男が座っていて、お世辞でも好印象を持てそうにない嫌味な笑みを浮かべた小太りの男が座っていた。

「ここで旅人と一戦やるとは思わなかったよ。」

ニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべながらルルーシュに話しかけてきた。

「お手柔らかに。」

ルルーシュは余計な事はしゃべらずそれだけ返すとチェスの駒に手をかけたのだった。








****

「まさか鍵をかけられるとはな…。」

客室へと残されたC.C.は暇そうに呟いた。
自分もルルーシュの戦いぶりを見に行きたかったのに、とひとりごちながらゴロリと寝返りを打つ。
身に纏ったスカートやブラウスに皺がよるかもしれない…と一瞬頭を過ぎったがいつも五月蝿い相棒は勝負の真っ最中でそれを口うるさくいう相手はいなかった。

『そこまでだ!お前達の悪事は全て調べさせてもらった!今から5分後に…』

暇つぶしにテレビなどつけてみたがどれもこれも全然楽しめない。
昔の古い刑事ドラマが目にとまり暫くみていたがやはり内容が頭にはいってこず溜息をひとつつくと電源をぷちりと切った。

ガチャリ

突然扉の鍵を開ける音がしてそちらに視線を向けた。
ルルーシュが帰ってきたのか…?
そう思ったが彼が帰ってくるにしてはまだかなり時間が早い。
不審に思いベットから身を起こす。
足音が近づいてきて顔を見上げるとそこには無表情のあの少年の姿があった。

「なんだ…?」

C.C.はなおも眉間に皺を寄せて呟いた。

しかし少年はC.C.の問いかけには答えず無言で歩みよると突然その手でC.C.の腕を掴んだ。

「悪いけど…今からあんたを査定させてもらうよ…」

少年が初めて口にしたその言葉にC.C.は一層顔をしかめた。

「査定…?」

(まさかルルーシュが負けたのか?)

一瞬だけ最悪な結果が頭を過るがアイツに限ってそれはないだろうと思い直した。

「それは随分と気の早い事で…。
まだ私のつれは負けた訳ではないのだろう?」

C.C.は琥珀色の強い瞳で少年を睨み付けた。
それに彼は少しだけ顔をしかめたが関係ないという風にC.C.を乱暴にベッドへと押し倒した。

「っ…!」

初めて微かだが動揺を見せたC.C.に少年は瞳を僅かに細める。

「うちのボスにも困ったものでね…自分のモノがどれくらいの価値があるか知りたがるんだ…。」

「だからこうやって事前に査定という訳か?」

C.C.は軽く溜め息をつくとどうしたものかと考える。
この状況はどうみても好ましくない。
このまま好き勝手されるつもりはないがルルーシュが今どういう状況かわからない限り下手にコードの力を使うわけもいかない。
考えた結果兎に角出来る限り自身の力での抵抗を行使するしかないと思い再びひとつ、大きな溜息をついたのだった。






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またしても続きます…orz
今回はイチャイチャするのに結構時間かけてしまったのであまり進展してないです(笑)
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