「久しぶりだね、こうして二人でいるの」 「うん。…ピーターは誰と回ってるの?」 「それは、ピーターに彼女ができるなんて有り得ないって言ってるのかい?」 「嘘、彼女いるの?」 「いないけど」 「ほら、いないじゃない。…まさか、一人で?」 「補習に捕まったんだ。そんな哀れなピーターのために、後でハニーデュークスに寄っても?」 「ピーターのためじゃないでしょ」 久々のホグズミード休暇だった。僕とハナコが付き合ってから二回目、ジェームズとリリーが付き合ってから一回目のホグズミードだった。ジェームズがリリーと行きたいと言い出したから、今回はこうしてガールフレンドと来たというわけだ。ジェームズは有頂天でちょっと頭がおかしかった。昨日なんてパンツ一丁でベッドで飛び跳ねたりするんだ。 シリウスは、どっかの胸の大きなお姉様方と一緒だと思う。馬鹿なんじゃないの? 「ずいぶん街の外れに来たね」 「こんな所にわざわざ来る人なんていないでしょ?二人っきりだね」 「なんか、リーマス今日変」 「そ?」 若者が喜ぶお菓子屋さんも悪戯専門店もここにはなかった。けど、全然不愉快なんかじゃないのは、言うまでもない。 「本当はね街中でもハナコと手をつないだりしたいけど、ちょっと恥ずかしくて」 「ううん、大丈夫。…今はつないでもいいの?」 「ふふ、いいよ」 「やっぱり今日のリーマス、ちょっと変」 「これでも緊張してるんだけど」 「うん、それもわかる」 ぎこちなく繋がった手は、ただぶらぶらと僕とハナコの間で、誰かに乗られた後のブランコのように揺れていた。ただ、それだけだった。 「いつ、戻ろうね」 「ぎりぎりまで。ハニーデュークスに寄ってそのまま帰れる時間に戻ろう?」 「それまで何するの」 「何もしないの」 「変なリーマス」 「うん、わかってる。君もわかってるんだろう、ハナコ?」 「うんわかってる。でも」 「でも?」 「恋人は、こういうときにキスするの」 「あれ、ハナコからそんなこと言うなんて珍しい。変なハナコ」 「知ってるよ」 春風と新緑の季節は、ちょっと頭のおかしな人が増える(露出狂やら痴漢やら、ね)。僕たちもちょっとおかしくなってしまったみたい。まぁでも、変態とは狂うベクトルが違うから、別にいいか。 春風と露出狂とあなたとのキス end. 20100515 |