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□春風
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「久しぶりだね、こうして二人でいるの」

「うん。…ピーターは誰と回ってるの?」

「それは、ピーターに彼女ができるなんて有り得ないって言ってるのかい?」

「嘘、彼女いるの?」

「いないけど」

「ほら、いないじゃない。…まさか、一人で?」

「補習に捕まったんだ。そんな哀れなピーターのために、後でハニーデュークスに寄っても?」

「ピーターのためじゃないでしょ」


久々のホグズミード休暇だった。僕とハナコが付き合ってから二回目、ジェームズとリリーが付き合ってから一回目のホグズミードだった。ジェームズがリリーと行きたいと言い出したから、今回はこうしてガールフレンドと来たというわけだ。ジェームズは有頂天でちょっと頭がおかしかった。昨日なんてパンツ一丁でベッドで飛び跳ねたりするんだ。
シリウスは、どっかの胸の大きなお姉様方と一緒だと思う。馬鹿なんじゃないの?


「ずいぶん街の外れに来たね」

「こんな所にわざわざ来る人なんていないでしょ?二人っきりだね」

「なんか、リーマス今日変」

「そ?」


若者が喜ぶお菓子屋さんも悪戯専門店もここにはなかった。けど、全然不愉快なんかじゃないのは、言うまでもない。


「本当はね街中でもハナコと手をつないだりしたいけど、ちょっと恥ずかしくて」

「ううん、大丈夫。…今はつないでもいいの?」

「ふふ、いいよ」

「やっぱり今日のリーマス、ちょっと変」

「これでも緊張してるんだけど」

「うん、それもわかる」


ぎこちなく繋がった手は、ただぶらぶらと僕とハナコの間で、誰かに乗られた後のブランコのように揺れていた。ただ、それだけだった。


「いつ、戻ろうね」

「ぎりぎりまで。ハニーデュークスに寄ってそのまま帰れる時間に戻ろう?」

「それまで何するの」

「何もしないの」

「変なリーマス」

「うん、わかってる。君もわかってるんだろう、ハナコ?」

「うんわかってる。でも」

「でも?」

「恋人は、こういうときにキスするの」

「あれ、ハナコからそんなこと言うなんて珍しい。変なハナコ」

「知ってるよ」


春風と新緑の季節は、ちょっと頭のおかしな人が増える(露出狂やら痴漢やら、ね)。僕たちもちょっとおかしくなってしまったみたい。まぁでも、変態とは狂うベクトルが違うから、別にいいか。



春風と露出狂とあなたとのキス



end.
20100515


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