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□人魚姫
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「おーい、ジェームズー!」


ぱたぱたぱたと、転がるように走ってきたハナコは、一冊の本を掲げた。タイトルは『人魚姫』?マーマンのことだろうか。イヤ、"姫"だからマーウーマン?まぁ、なんでもいいけど。


「どうしたの?その本」

「うん、リーマスに借りたの」

「ふーん。何の話?」

「悲しい話。あのね、人魚姫は人間の王子様に恋をして泡になっちゃうんだ」

「へぇ…なんだってそんな悲しい本を読んだんだい?」

「名前に惹かれたの。でも読んだら悲しくなっちゃった」


ハナコは小さく肩をすくめて、僕の隣に座った。ソファがぼすんと沈む。


「で、僕はその本をリーマスに返したらいいのかい?」

「へへへー、その通り!」


いたずらっ子な笑みだなぁ。左手を差し出すと、人魚姫の本がぽん、と置かれた。


「で、ハナコはこの本を読んで悲しくなっただけ?」

「んー、私が人魚姫じゃないってことはわかった」

「?」

「あっ、でもジェームズが人間じゃないってのもありかぁ…ジェームズはわたぼこりじゃないよね?」

「何てこと言うんだい、全く!それにその…ハハッ、ハナコはほんと、ずるいや」


にっこりと優しく笑ったハナコの頭を優しくぽんぽん、とたたくと、彼女はぎゅっと僕に抱きついた。



蝦蟇蛙に恋した人魚姫は泡にならない



end.
20100322
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いつか使いたかったタイトル!
ごめんジェームズ、蝦蟇蛙にしてしまった(笑)


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