「おーい、ジェームズー!」 ぱたぱたぱたと、転がるように走ってきたハナコは、一冊の本を掲げた。タイトルは『人魚姫』?マーマンのことだろうか。イヤ、"姫"だからマーウーマン?まぁ、なんでもいいけど。 「どうしたの?その本」 「うん、リーマスに借りたの」 「ふーん。何の話?」 「悲しい話。あのね、人魚姫は人間の王子様に恋をして泡になっちゃうんだ」 「へぇ…なんだってそんな悲しい本を読んだんだい?」 「名前に惹かれたの。でも読んだら悲しくなっちゃった」 ハナコは小さく肩をすくめて、僕の隣に座った。ソファがぼすんと沈む。 「で、僕はその本をリーマスに返したらいいのかい?」 「へへへー、その通り!」 いたずらっ子な笑みだなぁ。左手を差し出すと、人魚姫の本がぽん、と置かれた。 「で、ハナコはこの本を読んで悲しくなっただけ?」 「んー、私が人魚姫じゃないってことはわかった」 「?」 「あっ、でもジェームズが人間じゃないってのもありかぁ…ジェームズはわたぼこりじゃないよね?」 「何てこと言うんだい、全く!それにその…ハハッ、ハナコはほんと、ずるいや」 にっこりと優しく笑ったハナコの頭を優しくぽんぽん、とたたくと、彼女はぎゅっと僕に抱きついた。 蝦蟇蛙に恋した人魚姫は泡にならない end. 20100322 ーーーーーーーーー いつか使いたかったタイトル! ごめんジェームズ、蝦蟇蛙にしてしまった(笑) |