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□シガレットプロポーズ
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「もう、久しぶりに来たのに!」

「来いとは言ってねえだろ。つべこべ言うな」


久々に家の呼び鈴が鳴った。嬉しいことに学友が訪ねてきてくれたらしい。彼女、もといハナコは俺が扉を開けるなり、その臭いに顔をしかめた。


「まさか、煙草に手を出すとは…」

「あ?悪ぃか?」

「きっとリーマスが良い顔しないね」

「"臭い消しの呪文"を使うさ。アイツ、来るときには事前に連絡くれるからな。誰かさんと違って」


ハナコはふんっ、と鼻を鳴らして灰皿の煙草をゴミ箱へ捨てた。そしておえっ、と舌を出す。


「こんな臭いののどこが良いの?体にも悪いのに」

「んだよ、偽善者みたいに」

「別に偽ってないでしょう!?人がせーっかく心配してあげてるのに」

「あ?心配?」


そうよっ!と大きな声を響かせてハナコは差し出したクッキーをかじった。


「シリウス」

「あ?」

「シリウスは、け、結婚とか考えてないの?彼女とか、いんの?」

「んだよ、いきなり」


急に声色を変えて、うつ向き加減に話すハナコはいつもより綺麗に見えた。なぜだろう、学生のときみたく、ドキドキと胸が弾む。――ああ、もちろん、結婚なんて考えていない。


「女の人に興味ないの?あんなに、プレイボーイだったじゃない?」

「いつの話だ、バーカ。こんなとこに篭ってんだ。来るモンも来ねーよ」


そうして俺は煙草を手に取る。――いや、取ろうとした。ハナコがぱしん、と煙草を弾き飛ばした。


「何しやがる」

「わたし、さ」

「?」

「シリウスのことね、ずっとす、好…」

「ああー、タンマ!」


俺はハナコの言葉を制した。弾き飛ばされた煙草は、箱から飛び出しそこいら中に散らばっている。


「ハナコが考えてんなら…」

「?」

「俺はハナコにプロポーズする。女から告白されて、はいそーですか、なんて言えねーだろ。格好悪い」


そしてあからさまに驚いたハナコに、俺はこう付け足した。


「ただな、煙草は吸うぞ」




ヘビーシガレットに忠誠を誓え!
(ん、徐々に馴れていく方向で…)





end.
20090426


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