手をつないで、ぎゅっと目を閉じるのが好きだった。そして、心の中で10数えてから目を開けるのだ。多すぎる光と一緒に、貴方の影が網膜に飛び込む。貴方がそこにいるという『感覚』が『実感』になる。不安要素がきれいさっぱり浄化される瞬間が大好きだった。 「お前のその妙な癖、わけわかんねえぞ」 「うるさいなあ」 目の前の貴方――もとい、ジョージ・ウィーズリーがそう言う。わたしの10秒に付き合った後の口癖だった。もともとわたしだって甘え上手じゃないし、猫撫で声なんて出したくもない人間だけれど、この10秒だけは、2人の雰囲気がどんなにスイートでもピンク色でも許せた。いつだって、たったの10秒だけれど。 「ハナコさん?」 「ん?」 「どうかなさったの?」 「え?」 ぱっちりと大きな、色素の薄いお目目が、私の黒い瞳を覗き込む。それから、ゆっくりと視線は下がって―― 「手」 「ん」 「離さねえの?」 「……ん」 そっぽを向いて、ぶっきらぼうに。甘え上手じゃないのだ。何度も言わせないでほしい。 「……何かあった?」 「別に」 「嘘。嫌なことでもあった?悩んでんの?」 「いいえ」 ちらり、柱時計を見る。4月1日0時を告げる大きな鐘まで、あと10秒だった。 HAPPY happy birthday George! (フレッドも、ね!) |