「レギュラスってどうして獅子座の星の名前なの?極悪純血主義者の家庭じゃない」 「…極悪ってなんだよ」 僕の目を、じっと、それはもう、穴が空きそうななほど見つめながら、ハナコは尋ねた。ただただ純粋に、スリザリンの僕の、不自然な名前について。僕がずっと嫌悪していた、獅子の中の名前について。 「レギュラスって本当は、良い人なの?」 「グリフィンドールが良い者でスリザリンが悪者とでも言うの?」 「50パーセント当たり」 「ああ、生意気」 ずっとずっと、“レギュラス”が嫌いだった。小さな王と呼ばれるのも、それが、獅子座の心臓であったのも、どっちも。あの方に心酔してから、ずっと、ずっと。 「だけど」 「え?」 「もう、自分の名前が嫌いじゃない」 首を傾げるハナコをしり目に、僕は続けた。僕の自己満足だった。ハナコが求めている答えではない。でも僕だって、自分の名前の由来なんて知らない。ただ、むりやり、自分の名前を好きになろうとした。がむしゃらに。馬鹿みたいに。それは、こじつけや、屁理屈を固めたものだっただけかもしれないけれど。 僕にはじゅうにぶんだった。 「僕の名前は、獅子座が持っているんじゃない。僕が獅子座を、内側から焼き尽くすための名前だからね」 悶える大獅子 「そっか、」 「……忘れなよ。後々になって引き合いに出したりしたら、怒るから」 「…せいぜいレギュラスが燃え尽きないようにね。レギュラスがスリザリンでよかったよ」 グリフィンドールの彼女は泣いていた。綺麗だ、と思ってしまったなんて、これじゃあ巨大な獅子なんて焼き尽くせない。彼女の、安泰で、神聖で、揺り籠のような獅子を、焼き尽くすことなんて出来やしない。綺麗な雌蛇が悪い獅子にとらえられているとでも、また、妄想に、屁理屈に、こじつけに頼らない限り、焼き尽くせない。 悶える火種 end. 20110122 |