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□オータムオーシャン
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こんな寒いときにどうして海になんか来たんだろう。他に観光客らしき人はだれもいない。それなのに、ハナコは、砂浜を走ってるんだ。


「ねー、どうして来たのー?」

「来たかったからー!」

「夏に来ればよかったじゃないかー」

「夏に来れなかったから来たんだよー!」


ごもっとも。流石に海へ入ろうとはしないけど、ハナコは裸足になっていた。砂は柔らかくて、スニーカーだとズルズルと埋もれていく。


「リーマスも裸足になってよー!楽しいよー!」

「寒くない?」

「ヘーキ!」


靴と靴下を脱ぐと、風が妙に冷たかった。だけど、砂は暖かい。太陽の熱じゃあないのはわかったけれど、どうして暖かいかはわからなかった。


「どう?」

「思ったほど寒くないね」

「ねー!…海に入っても大丈夫かなぁ?」

「それは寒いでしょ」

「んー…ちょっとだけ」


ハナコは湿った砂の上を歩き出した。「冷たいー、冷たいー」。だったらやめればいいのに。それでもまだ海へ近づく。


「ハナコー!入っちゃだめだよー!」

「もう入っちゃったー!アハハ」


どうみたって、太陽がギラギラ照りつける常夏ビーチじゃないのに、それでもまたこの時期にここへ来たいと思った。そう、この時期に。


「ハナコ、そろそろ戻ろう?暗くなってきた」

「えー!やだあ!」

「また来年来たらいいじゃないか」

「一緒に来てくれるの!?」

「ハナコが来たいのならね」



君が太陽の代わりに



まぶしく笑えばいいじゃない。


end.
20091025


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